【5月7日 AFP】仏大統領選の決選投票で社会党のフランソワ・オランド(Francois Hollande)前第1書記が現職のニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領を破った勝利について、欧州・海外各紙は「欧州が転換点を迎えた」と伝えるとともに、多大な課題がオランド氏を待ち受けているとして注意を喚起している。

 保守系の英大衆紙デーリー・メール(Daily Mail)は、「オー・ルボワール(さようなら)、派手好き大統領!」との見出しでオランド氏の勝利を歓迎。一方、ドイツ各紙ではサルコジ大統領の敗北が独仏関係に及ぼす影響を懸念する論調が目立つ。

■戦々恐々とするドイツ

 フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)ドイツ版は、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相が「何としてもその勝利を避けたかった」オランド氏が「首相のお気に入り(サルコジ氏)に代わって仏大統領の座につく」と指摘。「メルケル氏にとっては、さぞ不愉快なことだろう。オランド氏がユーロ救済における脅威だからではない。欧州連合(EU)財政協定に経済成長要素を盛り込むよう求めるオランド氏の主張は、欧州でのメルケル首相の優位性を攻撃するものだからだ」と評した。

 左派系ベルリン(Berlin)紙ターゲスシュピーゲル(Tagesspiegel)も同様に、オランド氏の勝利はメルケル首相にとっては痛手だと報じている。「EU第2の経済大国フランスで国際金融市場の信用が失われれば、ユーロは弱体化する。そうなればドイツだけではユーロ安定化は不可能だ」

 一方、英紙インディペンデント(Independent)は、オランド氏の勝利、そしてサルコジ大統領の終幕によって「欧州が債務問題にどのように対処するか、またフランスがどのような外交政策を取るかが変化する」と報じた。

 英紙フィナンシャル・タイムズは、サルコジ氏を世界各国で最近見られる「現職に対する逆風の直近の犠牲者」と評し、世界は仏大統領選の結果に対する市場の反応を注視していると伝えた。

 オーストリアでは、最大売り上げ部数を誇る日刊紙クローネン・ツァイトゥング(Kronen Zeitung)が「オランド氏、サルコジ氏に引導を渡す」、ウィーン(Vienna)の地元紙プレッセ(Presse)は「新人を待ち受ける膨大な任務」との見出しで、それぞれオランド氏の勝利を報じた。

 一方、中国の国営英字紙・環球時報(Global Times)は、フランスが財政赤字削減改革を進めるためにはオランド氏の勝利だけでは不十分で、「より広範囲の内省からくる変化」が必要だと指摘。「フランスやギリシャの選挙で見られた緊縮政策への反発は、必要とされている内省からは現状がまだほど遠いことを示唆している」との見方を示した。

■日本は「欧州の議論注視」

 日本の時事通信(Jiji Press)は、フランスに加えてギリシャ総選挙でも緊縮財政に反対する野党が躍進したことにも触れ、有権者が下した厳しい選択に「EUの財政・債務危機対策は見直しを迫られそうだ」と伝えた。

 藤村修(Osamu Fujimura)官房長官は7日の記者会見で、「オランド次期大統領の政策をめぐる欧州内での議論が今後どうなるか、十分注視していきたい」とコメント。欧州債務危機は前年以来の危機的な状況を脱しつつあるものの「楽観できる状況ではなく、欧州経済の帰すうはわが国経済に与える影響も大きい」と述べて、仏独間の議論が「重要」との考えを示した。(c)AFP

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