【5月8日 AFP】南極の高密度水が過去数十年間で大幅に減少していることが、オーストラリアの研究で明らかになった。原因の一端は、人間による気候への影響があるという。

 研究によると、南極大陸の周辺で形成され、深海に沈み込んで世界の海洋に広がる「南極底層水(Antarctic Bottom Water)」は1970年以降、最大60%失われた。

 豪政府の科学機関、オーストラリア連邦科学産業研究機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research OrganisationCSIRO)の主任研究員スティーブ・リントール(Steve Rintoul)氏はAFPの取材に「これは、人為的な原因と自然の原因により起きている極地域の気候の変化による影響だ」と述べた。

「これは、気候を変化させる要因ではなく、気候が変化した結果として起きたことだ。つまり、南極周辺で状況が変わっていることを示す信号だ」(リントール氏)

 科学者たちはこの現象の原因について確信を持っていないものの、リントール氏によると最も有力な仮説は南極大陸辺縁部で氷の融解量が増加し、海に淡水が多く流れ込んでいるというものだ。リントール氏は、この結果、高緯度の海域で高密度水が沈んでいるのだと説明する。

 調査は、南極大陸沖のコモンウエルス湾(Commonwealth Bay)で、オーストラリア南極局(Australian Antarctic Division)の船舶オーロラ・オーストラリス(Aurora Australis)に乗船した豪州と米国の科学者らが実施した。

 調査チームは航海中に海水温と塩分濃度を測定し、南極周辺の海の塩分濃度が1970年より下がっていることも突き止めた。

 リントール氏は、この変化は「地球に対する人類の影響と、自然の周期の両方を反映している可能性が高い」と述べ、「人間の影響には温室効果ガスの増加の他にも、南極上空のオゾンホールもある」と説明し、オゾンホールの影響で南極海(Southern Ocean)の風力が強まったと付け加えた。

 リントール氏は、この変化は将来の海面上昇の速度と関連性があるため、その原因を突き止めることが重要だと指摘した。(c)AFP