【4月30日 AFP】かつて、バルト3国リトアニアの春から初夏の象徴といえば、一面の優美な青い花のじゅうたんだった――民謡や詩にも歌われたこの花は、同国名産の織物リネンの原料となる亜麻の花だ。リトアニア語で亜麻を意味する「リナス」「リナ」は、同国で最も人気の高いファーストネームとなっている。

 しかし、そんな亜麻の花畑は今やリトアニアでは見られなくなってしまった。現在、計350万人が働く同国のリネン産業を支えるのは専らフランスやイタリア、ベラルーシから輸入した糸だ。

 リトアニアの農家では2010年、繊維産業向けの亜麻の種付けが1ヘクタールすらも行われなかった。20年前は、2万ヘクタール以上もの作付面積に青い花が満開に咲いた。農家は、この現状について欧州連合(EU)への加盟が伝統産業を破壊したと非難している。

 2004年にEU加盟を果たした後、リトアニアの亜麻産業への政府の助成金は3分の1近くに削減されてしまった。ある農家によると、現在は1ヘクタールあたり675リタス(約2万円)ほど。「もう誰も亜麻を育てようとは思わないよ。採算が合わないから」とこの農家は語った。

 唯一、国内で亜麻を栽培を続けているのは中部Upyteにある農業研究センターだ。毎年、伝統の品種を守るためだけに300~500種類の亜麻の種付けを続けている。「われわれが栽培をやめてしまえば、リトアニアから亜麻の花が完全に姿を消してしまうかもしれない」と同センターのZofija Jankauskiene氏は語る。

 ただリネン産業そのものは盛況だ。リトアニア産リネン製品はフランス、イタリア、日本などに輸出されている。しかし国内で販売されるのは生産量の5%以下で、そのほとんどが観光客向けであるのも事実である。リネン製品のデザイナーの1人はAFPの取材に、「リネンはリトアニア人には高級すぎる製品になってしまった」と嘆いた。(c)AFP/Marielle Vitureau