【4月30日 AFP】中国国内の自動車販売台数が右肩上がりに伸びる中、世界の自動車デザインにおいても「中国色」が濃くなりつつある。

 中国は2009年に世界最大の自動車市場となった。11年は売り上げが伸び悩み、前年比でわずか2.5%増の1851万台に留まったが、それでも自動車業界の将来性は中国にあるとメーカー各社は確信しているようだ。

 4月23日に開幕した「北京モーターショー(Auto China 2012)」で取材に応じた各社は、大きなフロントグリルや目立つクロムパーツ、豪華な後部座席など、中国の消費者の好みを意識した製品の投入を開始したことを明らかにした。

「世界展開する車種にも、中国的な要素をもっと取り入れたい」と、日産自動車(Nissan Motor)の中国法人広報は述べた。「デザイナーたちは、(中国の)伝統的な切り紙細工や唐王朝時代の絵画などからインスピレーションを得ている。将来的には、全車種が中国での成功を意識しなくてはならない」

■中国発、世界へ――逆転現象始まる

 これまで中国外の自動車メーカーは、欧米で既に販売されている車種を中国市場に投入してきた。しかし中国が台頭し世界経済への影響が拡大したことで、この流れが逆転し始めている。

 仏シトロエン(Citroen)のフレデリック・バンゼ(Frederic Banzet)CEOは、次のように語った。「今後は、成長を続ける中国市場を重視する必要がますます高くなるだろう」「中国色を取り入れたデザインで他の市場にも打って出る」

 この言葉を裏付けるのが、プジョー・シトロエン(Peugeot Citroen)グループが2008年、上海(Shanghai)に設立したデザインスタジオだ。ここで中国市場のニーズを把握し、より需要に合った製品を市場投入してシェア拡大を目指している。現在このスタジオでは従業員約650人が働いているが、1000人に増強する計画だ。

 独フォルクスワーゲン(VolkswagenVW)グループも、上海と北東部の吉林(Jilin)省・長春(Changchun)の2か所にデザインスタジオを構え、多額の投資を行っている。2011年には中国でデザインされた新型セダン「パサート(Passat)」が国内市場で先行販売され、数か月後に北米市場に投入された。

 VW中国法人でデザインを担当・監修するサイモン・ローズビー(Simon Loasby)氏は、中国発のデザインが世界各地の同社製品に与える影響は拡大しつつあると指摘。同時に、ドイツ国内の開発プロジェクトにも多くの中国人デザイナーが参加していると述べ、「ここ(中国)で生み出された物が、どこまで世界全体を豊かにできるか。まさに驚きだ」と語った。(c)AFP/Virginie Mangin