【4月21日 AFP】英国では1月以降、欧州の宝くじ「ユーロミリオンズ(EuroMillions)」の大当たりが3回、出ている。それぞれの当せん金は約5000万ユーロ(約54億円)にも上る。

 英国でこの宝くじを運営する「キャメロット(Camelot)」で当せん者へのアドバイザーを行っているのがアンディ・カーター(Andy Carter)氏(38)だ。当せんしたことを知ると「みなさん、ショックを受けたり、これから何が起きるのかと怖がりますね。本当に当たったのかと確認もしたがります」

■早まって生活を大きく変えないように

 そんな当せん者全員に彼が伝えるアドバイスはまず「焦らずにゆっくり」だ。まずは頭を整理して、法的・財務的アドバイスを受け、さっさと仕事を辞めたりパートナーと別れたりしないように、と言う。

 ホテルのシェフ、ニール・ベイカーさんは昨年2月、国営宝くじで160万ポンド(約2億1000万円)を当てた際、カーター氏に紹介された。「ラグビーをしたり釣りに行ったりしている。好きな時に好きなことができるのは、すごくいい」というベイカーさんだが、そうしたのんびりした生活を長続きさせようと思ったら、注意しなければならないことに気づいていた。カーター氏たちキャメロットからの助言はすこぶる役に立ったと言う。「ただ玄関先に現れて、はい、これが小切手です、と手渡していくだけなんてことはしないんだ。誰かのひざの上に大金をポンと置くような真似はいけないってことを、理解しているんだと思う」

 ごみの収集で生計を立てていた10年前に1000万ポンド(約13億1500万円)を当てたマイケル・キャロルさんの話は、教訓を教えてくれる。当時19歳だったキャロルさんは当せん金で邸宅を買い、パーティーに明け暮れ、庭には車のレース用トラックを作った。しかし同時にドラッグにはまり、何度か警察の厄介になり、今はといえば生活保護で暮らしている。

 ただしカーター氏いわく、大半の人は極めて賢明で、スポーツカーを買ったり生活を丸ごと変えてしまうのではなく、家を購入したり、家族や親族を資金面で助けたり、多額の寄付をしている。

■沈黙を守るのは大変

 しかし大金を当てた人のもとへは、特にそれを公表すると色々な要求が舞い込む。

 中年のスコットランド人夫婦、ウィアーさん夫妻は昨年7月にユーロミリオンズで1億8500万ユーロ(約199億4300万円)を当てた時にそれを公表したところ、分けてほしいという手紙が殺到し、ついには引っ越さざるを得なかった。

 大当たりを公表すれば宝くじの運営側にとっては非常に良い宣伝になるが、この時カーター氏は、不要な注目が集まらないようにと配慮して、ウィアーさん夫妻に公表を勧めることはしなかった。それでも沈黙を守ることは実際には難しいとカーター氏は言う。

 例えば妻のクリスティーン・ウィアーさんは地元の新聞に「もしも誰にも言わないでいたら、何か悪いことをしてお金を手に入れたとみんなに思われたかもしれない」と語っている。シェフのベーカーさんも公表したくはなかったが、地元の新聞にすっぱ抜かれた時点で、カーター氏から公表したほうがよいとアドバイスを受けた。

 それでもカーター氏によれば、大金を当てた人の大半は暮らしが良くなっている。会社の規則で自分で宝くじを買うことは禁じられているカーター氏だが、アドバイスをした人たちと縁ができ、結婚式や子どもの洗礼式に招かれたりと、彼らの幸運の恩恵を自分も受けていると語る。「ものすごく幸せな境遇に置かれたものすごく幸せな人たちだけとお付き合いするという、とても不思議な仕事です」

 また経済的にまさに苦しんでいる時に宝くじを当てる人が多いと言う。「特に最近はそうです。世の中、仕事がなくて金銭的に辛い時に、宝くじは少しばかり希望を与えてくれるものです」(c)AFP