【4月16日 AFP】イングランドのFAカップ2011-12(FA Cup 2011-12)準々決勝で、ボルトン・ワンダラーズ(Bolton Wanderers)のファブリス・ムアンバ(Fabrice Muamba)が試合中に倒れてから約1か月間、プロスポーツ選手に対するより厳格なメディカルチェックの実施を要求する声が高まっていた。

 そして14日に行われた11-12イタリア・セリエB第35節の試合で、リボルノ(Livorno)に所属するピエルマリオ・モロジーニ(Piermario Morosini)選手が試合中に倒れ死去したことで、検査規定の見直しを求める声はさらに大きくなるだろう。

 試合中に選手が倒れて死去した事例は過去にもあり、頻発こそしていないものの、サッカーの競技人口と知名度の大きさゆえに、これらの死亡事故は大きな関心を集めることになる。

 2003年のコンフェデレーションズカップ(FIFA Confederations Cup)準決勝の試合中に倒れ、そのまま息を引き取ったカメルーン代表のマルク・ビビアン・フォエ(Marc Vivien Foe)選手をはじめ、2007年にはスペイン1部リーグのセビージャFC(Sevilla FC)に所属していたアントニオ・プエルタ(Antonio Puerta)選手、スコットランド・プレミアリーグのマザーウェル(Motherwell)で主将を務めていたフィル・オドネル(Phil O'Donnell)選手が、試合中の心臓発作で帰らぬ人となった。

 2004年には、ハンガリー代表のミクロス・フェヘール(Miklos Feher)選手、ブラジルリーグでプレーしていたセルジーニョ(Paulo Sergio Oliveira da Silva)選手が試合中に倒れて亡くなっている。

 サッカー以外の競技でも、選手の健康と安全性が問われる事故は発生しており、問題が起きる度にスポーツ競技に対する健康と安全管理の改善が求められていた。

 ボクシングでは1991年にマイケル・ワトソン(Michael Watson)、1995年にジェラルド・マクリーン(Gerald McClellan)が、試合中の脳出血で倒れ、半身不随になっている。

■過去の教訓から対策を講じていたイタリアでも悲劇を防げず

 モロジーニの訃報を受け、イタリアのスポーツ界では健康管理体制を見直す議論の再燃が予想されるが、イタリアはすでに過去の事故を教訓にしており、厳しい管理体制がしかれている。

 1969年にASローマ(AS Rome)のジュリアーノ・タッコラ(Giuliano Taccola)が試合前の控え室で心不全により倒れ、1977年にはペルージャ(Perugia)のレナト・クーリ(Renato Curi)が試合中の心臓発作で亡くなっている。

 イタリアでは、これらの事故を教訓にし、現在でも若いスポーツ選手に心臓の定期健診を実施しており、すべての成人は身体検査なしで武道場やボクシングジムへの入所を禁じている。

 ASローマに所属していた1989年に、ボローニャ(Bologna FC)との試合で心臓発作に襲われ、一命は取り留めたものの、現役引退を余儀なくされた元イタリア代表のリオネッロ・マンフレドーニア(Lionello Manfredonia)氏は、モロジーニ選手が倒れた試合を観戦していた。

 マンフレドーニア氏は、「プロスポーツ選手は必ず検診を受けているはずなのに、モロジーニ選手は悲しい運命を辿ってしまった。自分の時はスタジアムの中に救急車がいたため、幸運なことに助かった。彼は不運だったのかもしれないが、私からすれば時間が足りなかっただけのように思う」と語っている。

 またマンフレドーニア氏は、「私の時と似ていた。自分に起きたことを正確に覚えてはいないが、医師たちは心筋梗塞だと言っていた。でも精密検査をしても確証は得られなかったよ。6か月後には選手資格が剥奪されたけれど、それでよかったのかもしれない」と語った。

 2011年10月には、ACミラン(AC Milan)のアントニオ・カッサーノ(Antonio Cassano)が試合後に体調不良を訴え、病院に搬送された。虚血性脳卒中と診断されたカッサーノは、心臓の穴を閉じる手術を行い、2012年3月には練習復帰を果たしている。

 イタリアの人たちはどんな些細な前兆も見逃してはならないと肝に銘じているが、モロジーニ選手が所属していたアタランタ(Atalanta)でユースチームのコーチを務めるミノ・ファヴィーニ(Mino Favini)氏は、過去に予兆と思われる問題は見られなかったと話しており、「検診は毎年義務付けられているが、小さな問題すら見つかったことはない」と語っている。

 今回の事故を受け、イタリアのピエロ・ニューディ(Piero Gnudi)観光・スポーツ相は、「繰り返されてしまった悲劇は、可能な限りの手を尽くし、正確な検診を頻繁に行うことの重要性を私たちに示してくれた。再発防止へ向けてさらなる対策を講じるべきだ」とコメントしている。(c)AFP/Barnaby Chesterman