【4月12日 AFP】米司法省は11日、電子書籍の販売価格のつり上げと競争の阻害を共謀したとして米アップル(Apple)と出版社5社をニューヨーク(New York)の裁判所に提訴した。

 提訴された出版社は米CBSテレビ傘下のサイモン&シュスター(Simon & Schuster)、仏ラガルデール(Lagardere)傘下のアシェット・ブック・グループ(Hachette Book Group)、英ピアソン(Pearson)傘下のペンギン・グループ(Penguin Group)、独ゲオルク・フォン・ホルツブリンク(Georg von Holtzbrinck)傘下のマクミラン(Macmillan)、米ニューズ・コーポレーション(News Corporation)傘下のハーパーコリンズ(HarperCollins)の5社。

 アップルなどは共謀して、米インターネット小売大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)や米書店大手バーンズ&ノーブル(Barnes & Noble)などの小売業者に、電子書籍を安い価格で提供できる余地を制限する新しい仕組みを受け入れさせたとされている。

「卸売りモデル」と呼ばれる従来の仕組みでは、出版社は小売業者に電子書籍を販売し、小売業者が小売価格を決めることができたが、その後採用された「代理店モデル」という仕組みでは、出版社が小売価格を決め、販売価格の30%の手数料がアップルに支払われることになっていた。

 2010年にアップルがiPadを発売するまで電子書籍市場を支配していたアマゾンは多くの電子書籍を9.99ドル(約810円)で販売していたが、代理店モデルの導入後は12.99ドル(約1050円)以上になったという。

 アシェット、ハーパーコリンズ、サイモン&シュスターの3社は和解に応じたが、アップル、マクミラン、ペンギン・グループの3社は法廷で争う意向だ。マクミランのジョン・サージェント(John Sargent)最高経営責任者(CEO)は、司法省の要求は負担が大きすぎる上、代理店モデルの導入前にアマゾンが電子書籍市場で持っていた独占的な地位を復活させかねないと述べた。アシェットは、和解には応じたものの独禁法に違反していないと確信しているという声明を出した。

 アマゾンはこの和解を歓迎しており、これにより同社の電子書籍端末「キンドル(Kindle)」用の書籍販売価格を低くできるとしている。アップルの広報担当はこの件についてのコメントを拒否した。

 ボストン大学法科大学院(Boston University School of Law)のケイス・ヒルトン(Keith Hylton)教授は、代理店モデルはメーカーが小売価格を支配する一般的な慣行で、過去の複数の裁判で再販売価格維持行為には競争を促進する面もあると認められており、それ自体は違法ではないと話している。(c)AFP/Rob Lever