【4月5日 AFP】全身が柔らかい羽毛で覆われた新種の大型肉食恐竜の化石が、中国北東部・遼寧(Liaoning)省で発見された。大型肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex、T・レックス)の一種で、体重は車1台分にもなり、これまで発見された羽毛恐竜の中で最大の種になるという。

 中国科学院・古脊椎動物与古人類研究所(Institute of Vertebrate Palaeontology and Palaeoanthropoloy)の研究チームが、4日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

■「美しい羽毛の暴君」

 ラテン語と北京語の組み合わせで「美しい羽毛の暴君」を意味する「ユウティラヌス・フアリ(Yutyrannus huali)」と命名されたこの新種の化石は、「恐竜化石の宝庫」として知られる遼寧省の易県累層(Yixian Formation)で、ほぼ完全な状態で3体発掘された。この地層は約1億2500万年前、恐竜たちが繁栄を極めていたとされる白亜紀のものだ。

 同研究所の徐星(Xu Xing)氏によれば、「ユウティラヌスの羽毛は単純な繊維状」で、「現代の成鳥が持つような羽根ではなく、ひよこのふわふわした産毛に近かっただろう」という。

 発掘された骨格化石には貴重な頭部も含まれ、後ろ足で2足歩行する獣脚竜によくみられる長細い頭部や鋭い牙、3本指の前足を持つ姿が明らかになった。

 成体は体長約9メートル、体重は1.4トンにもなり、少なくとも約15センチメートルの長い毛に覆われていたと考えられる。T・レックスに比べると小ぶりだが、ユウティラヌス以前に見つかった羽毛恐竜の中で最大のベイピアオサウルス(Beipiaosaurus)の推定体重と比べると約40倍と、かなりの大きさだ。

■羽はあっても飛べなかった?

 ユウティラヌスの体は空を飛ぶには大き過ぎ、たとえ体が小さかったとしてもこの柔らかい羽毛では飛び立つことすらできなかっただろうと論文は指摘している。

 なぜユウティラヌスに羽毛が発達したのかをめぐる1つの仮説は、長い白亜紀の間には気温が下がった時期があり、それに適応するためだったというものだ。

 また別の説では、現代の鳥類が羽毛を求愛行動に使うのと同じように、ユウティラヌスも誇示行為に羽毛を用いたと推測されている。(c)AFP