【3月28日 AFP】米メリーランド大学(University of Maryland)メディカルセンターで19~20日、1997年に起きた銃の事故で上下両唇と鼻そして歯を失った米国人男性の顔面の移植手術が行われた。執刀した医療チームによると、これまでで最も広範囲にわたる顔面移植手術だという。

 移植手術を受けたのはリチャード・リー・ノリス(Richard Lee Norris)さん(37)。97年の事故発生以来、再建手術を含め、複数回の手術を受けてきた。それでも口の機能は制限され、また顔面の下半分と鼻が潰れてしまっているような外見となっていた。

 約36時間を要した手術では、上下両あご、歯、舌の移植が行われた。同センターはこれまでに行われた顔面の移植手術において、最も広範囲のものとしている。

 整形外科長のエドアルド・ロドリゲス(Eduardo Rodriguez)氏は声明で、「(手術では)表情を回復させるために下層の筋肉を含む頭皮から首までの顔面全ての軟組織を、さらに感覚と機能回復のために知覚および運動神経を移植した」と明らかにし、さらに「我々の目的は見た目の美しさを得ることと機能の回復である」と述べた。

 米テレビMSNBCによると、ノリスさんは過去15年間にわたって家に引きこもり、買い物は夜間に済ませていたという。またその際には、医療用マスクを着用して周囲の目を避けていた。

 世界で初めて顔面の完全移植手術を行ったのは、スペイン・バルセロナ(Barcelona)にあるバル・ド・ヘブロン(Vall d'Hebron)病院の医療チーム。この時に移植手術を受けた患者は2010年7月、記者会見に臨みその姿を見せた。(c)AFP

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