【3月22日 AFP】物理学者たちが、庭に飾る妖精の置物に世界各地を旅させて、地球の重力の偏差について研究している。

 使われているのはノームと呼ばれる庭用の置物。実験のため特別に作製した1体に「ケルン(Kern)」と名付け、ペルーのリマ(Lima)からインドのムンバイ(Mumbai)へ、オーストラリアのシドニー(Sydney)を経て仏領ニューカレドニアへ、さらには南極へと運び、その重さを測っている。

 この実験を思い付くヒントとなったのは「旅するノーム」と呼ばれるいたずらだった。これは、他人の家の庭にあるノームを盗み、色々な場所で撮影してインターネットに公開し、その後ノーム本体を元の家に戻すというものだ。

 実験プロジェクトはドイツの精密スケール製造企業のプロモーションの一環だが、同時に真剣な物理学的側面も持っている。

 重力の強さによって物体の重量は変わる。しかし「ほとんどの人が、地球の重力は(場所によって)わずかに違うことを知らない」と、プロジェクトのプレスリリースで実験コーディネーターのトミー・フィンペル(Tommy Fimpel)氏は述べている。

 地球の重力にばらつきがある主な原因として同氏は、地球の形状が「でこぼこ」なためだと説明している。「地球は実際、じゃがいものような形をしている。そのため地球上のどこにいるかによって、その人の体重は0.5%程度増減する。われわれの『ノーム実験(Gnome Experiment)』なら、この現象を楽しく測定できると考えたのだ」

「ケルン」は精密スケールと一緒にスーツケースに入れられ、プロジェクトに参加した世界各地の科学者たちの間を旅して回った。これまでの測定の結果、最も重い数値が出たのは南極にある米国のアムンゼン・スコット南極基地(Amundsen-Scott Research Station)で、309.82グラムだった。南極は地球の自転で生じる慣性力が強い。

 次に「ケルン」が訪れる先は、地球上で最も深い地下2000メートルにある実験室、カナダのサドベリー・ニュートリノ天文台(Sudbury Neutrino ObservatorySNOLAB)の地下実験室だ。もちろん、スイス・フランス国境の地下にある欧州合同原子核研究所(European Organisation for Nuclear ResearchCERN)の大型粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron ColliderLHC)」の実験室へも「旅行」を予定している。

「ケルン」の「旅行先」は、以下の公式サイトで追うことができる。(c)AFP

【参考】「Gnome Experiment」公式サイト(英語)