【3月19日 AFP】スペイン南部にあるそのユニークな集光型太陽熱発電所は、曇りの日でも稼働する。太陽光の降り注ぐ間に蓄えたエネルギーで夜間でさえも発電が可能だ。

 アンダルシア(Andalusia)の平原に立地するヘマソラール(Gemasolar)発電所は、昨年5月に運転を始めた。

 セビリア(Seville)からコルドバ(Cordoba)へ向かう道すがら、灯台のように輝く中央タワーを眺めることができる。195ヘクタールの円形状に配置された2600枚の反射鏡が集めた光でタワーは輝いている。反射鏡1枚の面積は120平方メートルだ。

「1日24時間、昼も夜も稼働する世界初のソーラー発電所だ!」と、発電所を運営するトレソル・エナジー(Torresol Energy)のテクニカルディレクター、サンティアゴ・アリアス(Santiago Arias)氏は語る。

 発電所のメカニズムは「とても簡単に説明できる」とアリアス氏は言う。反射鏡が太陽光をタワーに集め、容器に入った溶融塩に熱をためる。タワーに集まる光の強さは地球に届く太陽光の1000倍にもなり、溶融塩の温度は摂氏500度を超える。この熱で蒸気を作ってタービンを回して発電する。

■熱をためて夜でも発電

 ヘマソラールの特徴は、そのエネルギー貯蔵能力にある。日中に蓄えたエネルギーで夜間も発電を続けることができるのだ。

「太陽に左右されずに、適当な量だけその都度エネルギーを使うことができる」とアリアス氏は説明する。

 年間の稼働時間は、通常の太陽光発電所が1200~2000時間ほどのところ、ヘマソラールは6400時間に上る。このためヘマソラールは、エネルギー貯蔵機能を全く持たない発電所よりも60%以上多くエネルギーを生産することができる。

「ここのエネルギー生産量はスペインの3万世帯の消費量分に相当する」とアリアス氏。CO2(二酸化炭素)削減量は年3万トンだ。

■高い設備コスト

 惜しみない国の援助を受け、スペインの再生可能エネルギー産業は急成長を遂げた。太陽光発電では世界第2位、風力発電ではドイツを超えて欧州トップになった。

 ヘマソラール発電所は外国からの投資も受けた。事業者のトレソル・エナジーは、スペインのエンジニアリング企業セネル(SENER)が60%、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ(Abu Dhabi)のアブダビ未来エネルギー公社(通称マスダール、Masdar)が40%を出資した合弁会社だ。

「このタイプの発電所は高額の費用がかかる。エネルギー源は無料の太陽光だが、発電所の設備に膨大な投資が必要なのだ」とアリアス氏。投資額は総額2億ユーロ(約220億円)を超えた。

 だがアリアス氏は、原油価格が2003年以降1バレル28ドルから130ドル近くにまで高騰していると指摘し、「銀行への返済が終われば、この発電所は1000ユーロ札の印刷機になるだろう!」と述べた。アリアス氏によると、返済は18年で終わる見込みだという。

 しかし経済危機がこの種のプロジェクトの足かせになっている。スペインは財政赤字削減に苦しむなか景気後退入りし、同国政府は再生エネルギープロジェクトへの新規の支援を凍結した。このため3つのプロジェクトが止まっているとアリアス氏は言う。またヘマソラールの技術には外国からの引き合いも多いものの、世界的に厳しい経済情勢の中、成約したケースはまだないという。(c)AFP/Katell Abiven

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