【3月19日 AFP】17日に行われたトッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)とボルトン・ワンダラーズ(Bolton Wanderers)によるFAカップ2011-12(FA Cup 2011-12)準々決勝で、試合中に倒れたボルトンのファブリス・ムアンバ(Fabrice Muamba)は、依然として予断を許さない状態が続いている。

 コンゴ民主共和国のキンシャサ(Kinshasa)出身で、11歳の時に家族とともに英国に移住した23歳のムアンバは、1-1で迎えた前半40分過ぎに前触れなくピッチに倒れ、ロンドンチェスト病院(The London Chest Hospital)へ搬送された。

 ボルトンとロンドンチェスト病院は18日、ムアンバが心臓発作による心停止で倒れたことを明らかにした。

 クラブと病院が共同で発表した声明によると、「ファブリスはピッチと病院に向かう途中で蘇生処置を受けたため、搬送中に心臓が少しずつ動き出しました。最低でも24時間は集中治療室で治療を受けることになり、専門医師によって状態が監視されます」としている。

 オーウェン・コイル(Owen Coyle)監督とともに病院を訪れたボルトンのフィル・ガートサイド(Phil Gartside)会長は、お見舞いのカードを届けに病院を訪れたり、メッセージやメールを送ってくれた人々の優しさに、ムアンバの家族が感謝していることを明かした。

 ガートサイド会長は、「クラブを代表して、プレミアリーグおよびイングランドサッカー協会(Football AssociationFA)、サポートを申し出てくれたクラブに感謝を申し上げます。国際サッカー連盟(FIFA)や欧州サッカー連盟(Union of European Football AssociationsUEFA)、世界中の関係者がサポートを申し出てくれました」とコメントしている。

■20日に予定されていたボルトンのリーグ戦は延期に

 ムアンバが病院に搬送された後、ハワード・ウェブ(Howard Webb)主審は選手を控室に戻し、両チーム合意の下で1-1のスコアのまま試合中止を発表した。

 現場に居合わせ、涙を浮かべていたトッテナムのジャーメイン・デフォー(Jermain Defoe)は病院に駆けつけたものの、憔悴しきった様子で何も語ることなく病院を後にした。

 ムアンバの状態を受け、20日に予定されていたイングランド・プレミアリーグ第29節、ボルトン・ワンダラーズ対アストン・ビラ(Aston Villa)の試合は延期が決定した。

 ガートサイド会長は「トッテナム・ホットスパーとアストン・ビラには、今回のことをご理解していただき、深く感謝しています。また、私たちは連絡を下さったサポーターの多さに驚いています。皆さまから頂いた多くのサポートが、クラブが真の家族であることを証明しています。ファブリスの回復を祈り、彼への想いを絶やさぬようお願いを申し上げます」と感謝の意を表明している。

 ボルトンの本拠地リーボックスタジアム(Reebok Stadium)には、サポーターから花束やスカーフが手向けられた。

 18日に行われた試合では、試合開始前にムアンバへの拍手が捧げられ、FAカップ準々決勝のチェルシー(Chelsea)対レスター・シティ(Leicester City)戦では、ボルトンからチェルシーに移籍したギャリー・ケイヒル(Gary Cahill)が得点を決めた際に、『ムアンバの回復を祈る』と書かれたシャツを見せている。

 健康状態に問題が無かった選手が、プレー中に心臓発作に襲われたことは過去にもあった。

 2003年のコンフェデレーションズカップ(FIFA Confederations Cup)準決勝で、カメルーン代表のマルク・ビビアン・フォエ(Marc Vivien Foe)が心臓発作のため試合中に帰らぬ人となり、2004年には当時ボルトンに所属していたセネガル代表のカリル・ファディガ(Khalilou Fadiga)が、同じく心臓発作で倒れているものの、現在は回復している。(c)AFP/Julian Guyer