【3月15日 AFP】ソーラーパネル世界最大手のサンテックパワー(Suntech Power Holdings)が生産拠点を置く中国東部の江蘇(Jiangsu)省無錫(Wuxi)は人件費が極めて安い。そのため、省力化のために設計された機械は放置され、労働者が手作業で生産を行っている。

 安い人件費と約1万4000人が働く大量生産ラインのおかげで、サンテックパワーはたった10年で世界最大手のソーラーパネルメーカーに成長した。

 しかし、中国企業の台頭により打撃を受けた米業界は、中国のソーラーパネル企業は政府から不公正な補助金を受け取って米市場でダンピング(不当廉売)を行っていると訴え、大きな貿易問題に発展している。

 米政府は今月中にこの件に関する調査結果を発表する予定で、その内容によっては中国メーカーへ関税が課される可能性がある。

■中国の低価格戦略で米社の破綻相次ぐ

 これに対しサンテックパワーは、不公正な商慣行は行っていないと主張しつつ、価格を抑えて販売を促進し、より多くの人に製品を提供するという戦略を隠そうとしていない。

 だが米業界は、この先何兆ドルもの成長が見込まれる代替エネルギー産業での優位性を確立するため、中国政府は国営銀行による低金利融資や、直接的な補助金政策などあらゆる手段で自国の企業を不公正に支援していると主張している。

 国際的な販売価格の下落により米業界は大きな打撃を受け、2011年には少なくとも3社が破綻した。米バラク・オバマ(Barack Obama)政権から5億3500万ドル(約450億円)の融資保証を受けていたソリンドラ(Solyndra)、米ナスダック(Nasdaq)市場に上場していたエバーグリーン・ソーラー(Evergreen Solar)、そして米インテル(Intel)から独立したスペクトラワット(SpectraWatt)だ。

■中国の国内市場に期待

 サンテックパワーの24時間稼働の工場で働く従業員たちは、手作業でソーラーセルをプラスチックとガラスで挟んでソーラーパネルを作っている。基本給は1か月に1500~1800元(約2万~2万4000円)ほど。豊富な労働力を利用できたことで生産コストが下がり、製品価格も安くなった。太陽電池の原材料となるシリコン価格の暴落もさらなるコスト削減に寄与した。

 しかし、出力1ワットあたりのソーラーパネルの国際価格が約1ドル(約84円)にまで落ち込んだことで、サンテックパワーの利益率も下がっている。市場に大量の製品を送り込んで価格低下を招いた中国メーカーを非難する声も上がっている。

 現在世界第2位の石油消費国である中国は、クリーンエネルギーへの移行を進めており、2011年には太陽光発電電力の買い取り価格保証制度も開始された。

 サンテックパワーのグローバル・マーケティング責任者は、債務危機などで先行きが不透明な欧米市場よりも中国の国内市場に期待していると述べ、中国は来年までに単一の市場としては世界最大になるだろうとの見通しを示した。(c)AFP/Bill Savadove