【3月8日 AFP】米誌フォーブス(Forbes)の世界の長者番付(2012年版)が7日発表され、メキシコの通信王カルロス・スリム(Carlos Slim)氏が、米マイクロソフト(Microsoft)の共同創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏を抑えて3年連続で首位に立った。

 スリム氏の総資産額は690億ドル(約5兆6000億円)で、株式市場の低迷により前年比で60億ドル(約5000億円)減ったものの、1位の座を保持した。ゲイツ氏の総資産は610億ドル(約5兆円)で、ここ数年で合計280億ドル(約2兆3000億円)もエイズ(HIV/AIDS)やポリオ(Polio)対策などの国際慈善事業に寄付しているのにもかかわらず、2位にとどまった。

 3位は米著名投資家ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏で440億ドル(約3兆6000億円)、4位は仏高級グループLVMHを率いるベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏で410億ドル(約3兆3000億円)と、上位4人の顔ぶれは前年と同じだった。

 5位はスペインの衣料チェーン大手ザラ(ZARA)創業者で初のトップ5入りとなるアマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)氏。オルテガ氏の総資産は375億ドル(約3兆円)で、財政危機のスペインにありながら、前年比で65億ドル(約5000億円)増となった。

 以下10位までは、米ソフトウェア大手オラクル(Oracle)の共同創設者ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏、ブラジルの採掘王エイケ・バチスタ(Eike Batista)氏、スウェーデンの衣料王手「H&M」のオーナー、ステファン・パーソン(Stefan Persson)氏、香港(Hong Kong)の投資家の李嘉誠(Li Ka-Shing)氏、ドイツのスーパーマーケット大手アルディ(Aldi)の創業者でその超秘密主義でも知られるカール・アルブレヒト(Karl Albrecht)氏。

■株式市況低迷が影響

 フォーブス誌の長者番付には世界の富豪1226人が名を連ねており、うち最も人数の多い国は例年通り米国で425人(20位内では11人)だった。しかし、一部の国民への富の集中が進んでいる中国とロシアの富豪の増加も目立った。

 番付入りした人の数は、過去2年間続く世界経済の停滞を反映し、前年比で16人増にとどまった。平均総資産額は大きく変わらず37億ドル(約3000億円)だった。

 しかし、多くの富豪は株式市場低迷の影響を受けている。長者番付の常連だったインドの鉄鋼王ラクシュミ・ミタル(Lakshmi Mittal)氏は、保有する鉄鋼会社アルセロール・ミタル(ArcelorMittal)の株価が下落した影響で、総資産は104億ドル(約8400億円)減の207億ドル(約1兆7000億円)となり、2004年以降初めてトップ20から脱落した。アジア株式市場の低迷により、長者番付に入った中国人の数も前年の115人から95人に減少した。

■高まる中露の存在感、地位低下する欧州

 それでも番付に入った富豪の16パーセントは中国とロシアが占めており、ここ20年で先進国から新興国に富が移動した動きを裏付けている。

 米国に次いで富豪が多かったのはロシアで、96人が番付入りした。ロシアのトップは鉄鉱石・鉄鋼生産大手メタロインベスト(Metalloinvest)の経営者、アリシェル・ウスマノフ(Alisher Usmanov)氏。総資産は181億ドル(約1兆5000億円)で初めて国内首位になった。世界全体では28位だった。

 ウスマノフ氏は、上場間近の米フェースブック(Facebook)や、米ゲームメーカーのジンガ(Zynga)、米クーポン共同購入サイト大手のグルーポン(Groupon)などの有望ソーシャルメディア企業の株式を保有しているため、同氏の総資産は来年大幅に増加するだろうとフォーブス誌は予測している。

 中国本土でトップに立ったのは、オンライン検索サービス大手「百度(Baidu.com)」のロビン・リー(Robin Li)会長兼CEOで、総資産は102億ドル(約8300億円)だった。

 中露に次いで番付に入った富豪が多かった国は順にドイツ(55人)、インド(48人)、英国と香港(いずれも37人)、ブラジル(36人)、カナダ(25人)、そして台湾と日本(いずれも24人)となっている。低迷する欧州経済の影響も顕著に現れ、番付入りした欧州の富豪は310人と、2年連続でアジア太平洋地域(315人)を下回った。(c)AFP/Paul Handley