【3月6日 AFP】(写真追加)パリ(Paris)に店を構える菓子職人、マリー・タリアフェロ(Marie Tagliaferro)さんのお菓子を初めて食べた人の中には泣き出す人もいる――単に美味しいからだけではない。お菓子の材料にグルテンが含まれていないからだ。

 グルテンは、小麦などの穀物に含まれるたんぱく質で、グルテンアレルギーの人が食べると下痢や嘔吐を引き起こす恐れがある。

 仏グルテン過敏症協会(French Association of Gluten Intolerence)のブリジット・ジョリベ(Brigitte Jolivet)会長によると、20~30年前の教科書にはグルテンアレルギーは子供が抱える問題で、青年期の間に自然になくなると書かれていた。このため当時教育を受けた医師には大人でもグルテンアレルギーの人はいるという意識は低く、フランスではこのアレルギーについていまだにあまりよく知られていない。

 店のオーナーである夫のフランソワ(Francois Tagliaferro)さんによると、店にやって来る顧客は皆「本当にグルテンフリーなんですか?」と聞いてくる。「私たちは、ええ約束しますよ、グルテンは入っていませんと答えるんです。すると、非常に感激した様子で食べ始め、中には、ルリジューズ(シュー菓子)やレモンメレンゲタルトを15年間も食べてないといって、涙を流す方たちもいます」

 フランスの作家マルセル・プルースト(Marcel Proust)の小説に出てくるマドレーヌが呼び覚ます記憶と全く同じとはいわないまでも、何十年もチョコエクレアを我慢してきた人たちにとってこの店は天の恵みのようなものだ。

 ケーキやペストリー作りはマリーさんの生きがいだったが、数年前に医者から、重度のグルテンアレルギーを持っていると言われ、当時はもう二度とお菓子作りを楽しむことはできないと思ったという。だがその後、彼女はグルテンフリーのフランス菓子作りに力を注ぐ店をオープンさせた。

 これまでのところ、タリアフェロさん夫妻の予想をはるかに上回る熱烈な反応があった。うまく行けば2人は、近いうちにフランスの食文化の象徴ともいえるバゲットをグルテンフリーで作ることに挑戦するつもりだ。(c)AFP/Warwick Wise