【3月5日 AFP】「中世の戦場さながらの包囲攻めと大虐殺だ」――。シリア反体制派が拠点としていた中西部ホムス(Homs)で取材活動中、政府軍の砲撃で負傷し脱出した英紙サンデー・タイムズ(Sunday Times)の写真記者、ポール・コンロイ(Paul Conroy)氏(47)が2日、現地の状況をこのように語り、シリア政府を「殺人者だ」と非難した。

 コンロイ氏は2月22日、ホムス市内でも特に激しい攻撃にさらされていたババアムル(Baba Amr)地区を取材中に政府軍の砲撃を受け負傷。28日にレバノン経由でシリアを脱出した。脚に2か所重傷を負ったほか、背中からは自分でも気付いていなかった7.6センチほどの爆弾の破片が摘出された。

■「逃げ場ない」「戦争ではなく虐殺」

 ババアムル地区はこの数か月間、バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権に対する蜂起の象徴となっていたが、4週間にわたって政府軍に包囲攻撃を受け、反体制派は1日、同地区からの「戦略的撤退」を発表した。

 英国に帰国し入院中の病院から米テレビCNNの電話インタビューに応じたコンロイ氏は2日、「ババアムルには逃げ場所がない。屠殺(とさつ)場だ」と述べ、ホムスでは家を出て通りに立てばたちまち狙撃兵に撃ち殺されると語った。

「ババアムルには軍事的標的など実際ない。それどころか、全ての集中砲撃が標的にしているのは民間人だ」

「あれを戦争と呼ぶのは間違っている。中世の包囲攻めと大虐殺だ。戦争という言葉を使うことさえ躊躇する」

 コンロイ氏は以前、英衛星放送テレビ・スカイニューズ(Sky News)のインタビューでも、シリア政府軍の攻撃は「男性、女性、子どもに対する無差別虐殺」だと表現している。

 攻撃は毎朝6時30分に始まり、「戦地で使用する武器を使って順々に各地区を移動して」いった。現地では電気、水道が途絶え、食糧も乏しく、人道的状況は「惨事以上のものだ」った。

「ホムスにはまだ数千人が、砲撃を浴びながらがれきの中で生きている。1つのベッドを6人の子どもが分け合い、死を待つ人が部屋いっぱいにあふれている。救援もなく、ただ兵士が突入してくるか、砲弾がドアを破る瞬間を待っている」

■外国人記者2人は「狙って殺された」

 コンロイ氏が負傷した砲撃では、サンデー・タイムズ同僚の米国人特派員メリー・コルビン(Marie Colvin)氏と、フリーランスの仏人報道写真家レミ・オシュリク(Remi Ochlik)氏が死亡した。シリア政府は2人の死について調査すると約束したが、コンロイ氏はそんな約束は「ばかげている」と一蹴。2人を殺害した者たちは国際司法裁判所で人道に対する罪を問われるべきだと強く非難した。

「メリーが殺された時、わたしは一緒にいたのだ。誰が彼女を殺したのか知っている」

「プロの砲兵隊員たちがメリー・コルビンを狙い、夾叉(きょうさ)砲撃し、殺したのだ。彼らはレミも殺した。これは殺人だ。調査など必要ない」

「殺人者が殺人者を調査してどうなるのだ」

 コルビン氏とオシュリク氏の遺体は2日、ホムスからシリアの首都ダマスカス(Damascus)へ移送され、4日に空路で仏パリ(Paris)に到着した。(c)AFP