【3月2日 AFP】(一部更新、写真追加)2月27日にインド洋をセーシェルに向けて航行中に機関室から出火して動力を失ったイタリアのクルーズ船「コスタ・アレグラ(Costa Allegra)号」は1日、フランスの漁船にえい航されてセーシェルの首都ビクトリア(Victoria)の港に入った。

 記者会見したニコロ・アルバ(Niccolo Alba)船長は、出火から完全に鎮火するまでの3時間ほどは非常事態体制を取り、乗客にライフジャケットを着せ、救命ボートに乗せる準備をしていたと語り、非常時の国際的な規則には全て従ったと述べた。

 火災で電気系統が故障したため照明、トイレ、空調が使えなくなった。船長によると、予備のディーゼル発電機も数時間で壊れてしまったという。乗客はうだるような暑さの中、火災発生後からセーシェル入港までのほとんどの時間をデッキに出て過ごした。

■さんざんな船旅

 船を降りた乗客たちは怒り、疲れ果てた様子だった。乗客の1人は、「最悪の事態が起きたと思った。(1月中旬にイタリア中部で座礁した同じ運航会社の)別のクルーズ船の事故もあったばかりだったし、信じられない気持ちだった。海に飛び込む光景が頭に浮かんだよ。妻は怖がっていた」と話した。

 ベルギーから来た乗客の男性(62)は、「大変な旅だった。エアコンは使えないし、トイレが流せないので船室はひどく臭い。仕方がないのでデッキで寝たよ。食べ物はあったが、料理されたものはなかった。パンばかり食べていた。とても疲れた。この騒ぎが終わってくれてうれしい」と話した。

 コスタ・アレグラ号に乗り込んでいたカミロ・テスタ(Camillo Testa)神父は、「インド洋の真ん中で子供たちや高齢者を連れて船を捨てざるを得なくなることを恐れました」とイタリアのニュースチャンネルSky TG24に語った。「最悪の瞬間は警報が聞こえたときでした。すぐに非常時の対応が取られました。船室に戻れなくなったので、ちょっとしたパニックが起きました」

■セーシェル旅行の費用を提供

 しかし、そのパニックが収まった後は、できる限り休暇を楽しもうとした人もいた。「常時バーを開けておきました。水はちょっと不足気味でしたが、酒は十分にありましたからね」(フィリピン人バーテンダー)

 港には医療チームと救急車が待機したが、報告された負傷者は転んで手首と肩に軽傷を負った高齢の女性2人だけだった。乗客たちはおおむね疲れた様子だったが、デッキから手を振る人もいた。乗客をホテルに運ぶたくさんのバスと、イタリアの捜査当局者も港でコスタ・アレグラ号を待った。

 運航会社コスタ・クロシエレ(Costa Crociere)は、希望する乗客がセーシェルで1~2週間過ごす費用として、「乗客が支払ったクルーズ船の料金および関連の旅行費用に相当する金額」を負担すると発表した。乗客の約70%がこの提案を受け入れたという。残りの乗客にも、今回のクルーズ費用のうち火災で実施できなかった分の金額に相当する同社クルーズのクーポン券を提供するという。

 25日にマダガスカルを出航したコスタ・アレグラ号は、セーシェルを経て、オマーン、紅海、地中海に行く予定だった。(c)AFP/Ella Ide

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