【2月16日 AFP】体重がスプーン2杯分の砂糖ほどしかない小さな渡り鳥ハシグロヒタキ(Oenanthe oenanthe)が毎年、北極圏からアフリカ大陸まで往復で2万9000キロもの長距離の渡りをしていることを突き止めたカナダの研究チームの論文が15日、英国王立協会(British Royal Society)の専門誌「バイオロジー・レターズ(Biology Letters)」に掲載された。

 ハシグロヒタキは痩せたスズメほどの大きさで、体重は25グラム程度。この黄褐色と白色の小さな食虫鳥が持つ驚異的な長距離飛行能力は、生物学者らを十分に驚かせるものだった。

 カナダ・オンタリオ(Ontario)州のゲルフ大学(University of Guelph)の研究チームは、アラスカ(Alaska)とカナダ北東部バフィン島(Baffin Island)で、計46羽のハシグロヒタキの脚部に重量1.2グラムの小型位置探知装置を装着し、その渡りの動向を調べた。その結果、ハシグロヒタキたちがアフリカで越冬していることが分かった。

■驚異的な渡りの距離

 アラスカを生息地とするハシグロヒタキたちはアラスカを飛び立った後、シベリアやアラビア砂漠を越えて、約91日かけてアフリカ東部のスーダン、ウガンダ、ケニアに到達していた。これは片道1万4500キロの距離で、ハシグロヒタキは1日平均290キロの距離を飛んでいた計算だ。アラスカまでの復路に要した日数は、55日程度だった。

 一方、バフィン島を飛び立ったハシグロヒタキは、北大西洋を越えて英国グレート・ブリテン島に降り立った後、再び南下。欧州大陸、地中海、サハラ砂漠を越えて、西アフリカ・モーリタニアの沿岸で越冬していた。往路に要した日数は26日だが、復路は55日かかっている。片道の飛行距離は約7500キロだった。

 ゲルフ大学のライアン・ノリス(Ryan Norris)氏は「これほど小さな鳥なのに、実に驚異的な渡りの距離だ」と言う。「コマドリより小さくて、フィンチ(スズメ目アトリ科の鳥の総称)より多少大きい程度の小鳥が、北極圏のツンドラで生まれて、そのわずか数か月後には冬季の食料を求めてアフリカまで飛んでいくんだ」

 カッコウやアホウドリなど翼幅が大きい鳥が、越冬のために大陸間の渡りをすることはよく知られている。だが、ゲルフ大の研究によって、小さな鳥も長距離の渡りをしている証拠が、論争の余地のない形で示された。

 ノリス氏によると、体の大きさを考えると、ハシグロヒタキの渡りの距離は世界の鳥類の中で最長クラスだ。これほどの長距離を年2回も移動するには相当の体力を必要とするが、ハシグロヒタキのように小さな鳥でなぜそれが可能なのか、特にその年に生まれたばかりの渡りの経験のない鳥が、なぜ自力でアフリカまで行けるのかという新たな謎が浮上したとノリス氏は話している。(c)AFP