【2月15日 AFP】東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故から間もなく1年を迎えるなか、現在開催中の独ベルリン国際映画祭(Berlin International Film Festival)に原発事故の日本社会への影響を検証した3本のドキュメンタリー映画が出品され、注目を集めている。

 11日間に及ぶ同映画祭は、他の国際映画祭に比べて政治色が鮮明で、切り口の鋭い出品作を誇っている。福島の原発事故を扱ったドキュメンタリーはこうした背景に沿ったものといえるだろう。

■『Nuclear Nation』

 話題の3作品の1つ、『ニュークリア・ネイション(Nuclear Nation)』の舩橋淳(Atsushi Funahashi)監督はAFPのインタビューに対し、「政治的、社会的意識の高い作品を上映してきた長い歴史を持つベルリン国際映画祭に出品できることは、この上なく嬉しい」と語った。

 舩橋監督の家族は広島で原爆に遭った。そのため核の問題については元々敏感だったが、福島の原発事故には最初どう向き合うべきか戸惑ったという。しかし、「映画制作者として何をすべきか分からなかったが、何かをしなければと思った」。日本政府の公式発表と世界から届く情報との差が、動機の1つとなった。

 舩橋監督は福島第1原発がある福島県双葉町から、250キロ離れた廃校の校舎に避難した住民たちに密着した。ストーリーでは、なくなってしまった町の地域社会をどうにか維持しようとする町長の姿を追った。

■『無人地帯』

 一方、藤原敏史(Toshi Fujiwara)監督の『無人地帯(No Man's Zone)』は、事故後立ち入りが制限された原発から半径20キロ圏の警戒区域内とその周辺地域で「普通の」人たちに、暮らしにどんな影響があったかを尋ねている。

 オープニングでは、がれきの平原に船や車が横たわる。満開の桜や青々とした牧草を食む牛といった光景が挿入されながら、生活の手段を失った農民や漁師、修復費がかかっても壊れた家に住みたいという老夫婦などが、生の言葉で語っている。藤原氏は「避難させられた人たちが無視されている」のはおかしいと思ったと述べている。

■『friends after 3.11』

 3本目は、岩井俊二(Iwai Shunji)監督の『friends after 3.11』。同監督が旧友や、原発事故後に知り合った「新しい友人」である原発技術者や銀行家、ジャーナリストらと日本の政治、社会、経済状況について語り合う。岩井監督は「その『友人』と語る日本の今、未来を描きたい」とメッセージを発している。(c)AFP/Kate Millar