【2月9日 AFP】高所からパラシュートを使って飛び降りる「フリーフォール」の第一人者、オーストリア人のフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)さん(41)が今年、上空約3万7000メートルからのスカイダイビングで世界記録樹立を目指している。

 バウムガルトナーさんはこれまで、台湾の超高層ビル「台北101(Taipei101)」やブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)のキリスト像(Christ the Redeemer)からのフリーフォールに成功してきた。天候が許せば年内に、米ニューメキシコ(New Mexico)州ロズウェル(Roswell)からヘリウム気球に乗って上空に上がり、目標の高度に到達したら気球から飛び降りる計画だ。

■目指せ音速超え

 今回の挑戦では、「生身の体で音速の壁を破った史上初の人類」の称号を狙う。大気圏上層部は空気が薄いため抵抗力はほとんど生じないとされ、落下開始からほどなくスピードは時速約1110キロ以上の超音速に到達する予定だ。地上に近づくにつれて空気が濃くなり、落下速度が落ちると見られる。

 また、フリーフォールの高さだけでなく、有人気球飛行高度とフリーフォール継続時間でも世界一を目指す。地上に降り立つまでには5分30秒かかる見込み。

 この挑戦を医学的見地からサポートするジョナサン・クラーク(Jonathan Clark)氏は、「超音速が人体に及ぼす影響を探れる」と期待を示した。プロジェクト・スポンサーのオーストリア飲料大手レッドブル(Red Bull)は7日、特設サイトに掲載した声明で「人間は生身で超音速を生き残れるか?」と問いかけている。

■宇宙飛行士にとっても有益な科学プロジェクト

 現在、最も高いフリーフォールの世界記録保持者は、1960年に気球から吊り下げた高度3万1333メートルのゴンドラから飛び降りたジョー・キッティンジャー(Joe Kittinger)元米空軍大佐だ。同氏は今回、スペシャルアドバイザー兼「指導者」としてプロジェクトに参加している。

 レッドブルは、今回のフリーフォールは「時速1120キロを超えるスピードに耐えられる宇宙服やパラシュート」の新基準を提示する科学プロジェクトでもあると説明。上空2万4000メートルで作戦を行う戦闘機パイロットや、問題が生じた宇宙船から脱出を図る宇宙飛行士などが恩恵を受けるだろうと述べ、次のようにコメントしている。

「将来は、旅行先に宇宙を選ぶ人が続出しないとも限りません」 (c)AFP

【参考】レッドブルの特設サイト

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