【2月4日 AFP】ウガンダの首都カンパラ(Kampala)にあるムラゴ病院(Mulago Hospital)のやけど病棟の外で、ダーリソンさん(24)は注意深くヘッドスカーフの位置を調節する。ひたいから右ほおにかけてまだら模様を作った醜いやけどの跡をこれで隠しているのだ。

 同じ病棟には、夫で地方議員のジョセフさんが全身に包帯を巻かれて横たわっている。激痛のため動くこともできない。夫婦は先月、何者かに硫酸を浴びせられた。「故郷の村に構えた小さな店の外で、夫と私は座っていました。すると突然、酸を浴びせられたんです。犯人は逃げました」とダーリソンさん。まだ犯人はつかまっていないが、彼女には心当たりがあるという。「きっと、夫の前妻です」

 この国では、硫酸攻撃が急増している。過去10年間で、制裁を加えたり、仕事や私生活での恨みを晴らす手段として、安く入手できる硫酸を浴びせる事件が増えているという。

 ムラゴ病院の医師によると、硫酸攻撃の件数は昨年12月のホリデーシーズンに従来の倍以上に増えた。地元メディアは、この期間に40人を超える犠牲者がカンパラ市内の病院に搬送されたと報じた。ある形成外科医は、祝い事の季節になると犠牲者が増えると話す。

■警察や法制度への不信感が背景に

 社会学者らは、硫酸攻撃が増えている原因について、紛争処理における警察や法制度への不信感や、都市部への人口流入に伴い伝統的な家族構成が広く崩壊したことを挙げる。

 硫酸攻撃の被害者を支援する地元NGO「Acid Survivors Foundation Uganda」の共同創設者で、自らも被害者であるPrudence Komujinya氏は、硫酸を浴びたことによる人生への影響は計り知れないと言う。「身体的にも、社会的にも、経済的にも、心理学的にも、大変な試練が待ち受けています。外観が損なわれると不名誉の烙印を押されることも多いのです」

 警察と司法当局は硫酸攻撃に対して以前よりも厳しく対処するようになったが、有害な化学物質を規制する新しい法律の制定を求める市民の声は、実を結んでいないという。(c)AFP