【1月20日 AFP】ケニアの観光業は長年、「サファリ」を楽しむ外国人観光客が落としていく外貨に頼ってきた。だが、このところ様相が異なっている。中産階級の急増により、今や国立公園の入園客の3分の2はケニア人なのだ。

 急成長を続ける首都ナイロビ(Nairobi)で会計士として働いているという男性は、市郊外にあるナイロビ国立公園(Nairobi National Park)に家族連れでやってきた。「素晴らしかった。家族全員が楽しめたよ」と、満面の笑みを浮かべた。

 ケニア野生生物庁(Kenya Wildlife Service)によると、同国内の国立公園を訪れるケニア人は年々増え、この5年間で55%も増加した。「特に、新興中産階級の出身者が国立公園に関心を示している」と、ジュリアス・キプンゲティッチ(Julius Kipng'etich)長官は言う。「国立公園の入園者にケニア人が占める割合は、5年前は57%だったが、いまや64%だ」

 ナイロビ国立公園の入り口には、週末ともなれば、家族連れや教師に引率された児童・生徒が行列をなす。高いフェンスで囲まれた公園内は起伏のある広大な草原となっており、ガゼルやキリン、ライオンなどが徘徊する雄大な眺めを堪能できる。

 2人の子供を連れてきた公務員の女性は、「子供たちに母国の動物を見せるのは良いことです」と話した。

■「アフリカ」のイメージに変化、中産階級が台頭

 アフリカといえば、貧困、飢餓、汚職、戦争のイメージが根強い。ケニアも例外ではない。通貨はもがき苦しみ、北部は前年の大干ばつの影響で貧困にあえぎ、軍は隣国ソマリアのイスラム武装勢力の掃討のため越境攻撃を行っている。

 だが、そんなアフリカには有望な変化の兆しがある。アフリカ開発銀行(African Development BankAfDB)は、アフリカ全体の中産階級人口が過去30年で3倍になったとの試算を発表した。いまやアフリカ人の3人に1人以上は中産階級ということになる。ケニアに限れば、人口の17%が中産階級だという。

 AfDBが定める中産階級の定義は、年間所得3900ドル(約30万円)以上と低い。だが、マンションやビルの建設ラッシュに沸くナイロビでは、スラムで極貧生活を送る多くの人々がいる一方で、良い暮らしを送れるようになった人たちもいる。例えば、ケニアの自家用車販売台数は、AfDBの統計によれば2002~07年に2倍以上に増えた。

■地元客で外貨依存脱却めざす

 ケニア野生生物庁も、この変化の波を逃すまいと、地元民への宣伝活動に力を入れている。「国立公園にお越しくださいと、随分宣伝してきた。地元の観光客が増えれば、外国からの観光客が突然減ったとしても影響は小さい」と、キプンゲティッチ長官は説明する。

 ナイロビ国立公園の入園料は、ケニア人なら大人1.5ドル(約116円)、小人75セント(約58円)。外国人料金に比べてはるかに安いが、それでもナイロビの多くの家庭にとっては大きな出費だ。

 建築資材の卸売業をやっているという男性は、「安くはない。でも、余裕があれば払えない額ではないし、子供を連れてくる価値はある。子供たちも楽しんでるみたいだし、僕だって楽しい」と話した。(c)AFP/Peter Martell