【1月19日 AFP】国際隕石学会(Meteoritical Society)は17日の会報で、前年7月18日、モロッコに極めて珍しい火星の隕石(いんせき)が落下していたことを明らかにした。

 モロッコ南部タタ(Tata)の東にあるドラア谷(Oued Draa)では、同日午前2時ごろに火の玉が目撃された。ある目撃談によると、最初は黄色だった玉は、緑色に光り輝いた後、2つに割れた。2回の衝撃音が谷中に響いたという。

 遊牧民らはこの玉の追跡を始め、10月までに、タタの東南東50キロの地点で重さ7キロの隕石の破片を複数発見。すぐさま取引業者に売り飛ばした。これを、各地の博物館が1グラムあたり500~1000ドル(約3万8000~7万7000円)であわてて購入。同学会の専門家チームが分析し、火星の隕石であることを確認したという。

 なお、隕石の価格は金価格の10~20倍だ。

 地球上ではこれまでに100個程度の火星隕石が見つかっているが、落下が目撃されたのは、今回で5例目に過ぎない。前回は1962年にナイジェリアで目撃されている。

■なぜ地球に落下したか

 専門家チームの1人で米ニューメキシコ大学(University of New Mexico)の博物館の学芸員、カール・アギー(Carl Agee)氏は、「火星隕石の一部はガラス状物質の中に火星の大気を閉じ込めている。研究室で熱して放出させ、測定する大気は、火星探査機が火星で測定する大気に等しい」と話す。

 こうした隕石は、火星に巨大隕石が衝突した際、火星の引力にとらわれない速さで火星表面から宇宙に投げ出されたかけらだと考えられる。

 チームは今後、宇宙線が隕石に刻んだ放射能の痕跡を調べる予定。この分析により、地球到達までに要した時間が分かる。恐らく数千年から数百万年かかったのではないかと推測されている。(c)AFP/Jean-Louis Santini