【1月17日 AFP】イタリア中部ジリオ(Giglio)島の沖合でクルーズ船「コスタ・コンコルディア(Costa Concordia)号」(11万4500トン)が座礁した事故は、16日までに6人の死亡が確認された。このほか、乗組員4人を含む29人が行方不明のままだ。事故では、人的被害に加え、新たに環境災害への恐れが指摘されている。

 事故は13日、風光明媚なトスカーナ州ジリオ島沖で乗員乗客4200人あまりを乗せたコスタ・コンコルディア号が岩礁に衝突し座礁したもの。

■事故は「環境への時限爆弾」、現時点では燃料漏れなし

 ジリオ島のセルジオ・オルテッリ(Sergio Ortelli)首長は、事故を「環境への時限爆弾」と評する。同首長によると、コスタ・コンコルディア号は出航から間もなく座礁したため、2380トンもの燃料油が船内に残っている。現在、座礁船の周囲に油拡散防止用のオイルフェンスの設置作業が進められているという。

 オルテッリ首長は、燃料抜き取りの重要性を強調したうえで、コスタ・コンコルディア号についても他の船舶の航行の妨げとなることから、早急に撤去してほしいと語った。

 ジリオ島当局では周辺海域の監視を続けているが、これまでのところ油の流出は確認されていないという。

 また、地元沿岸警備隊も、座礁客船の撤去と燃料の流出防止をコスタ・コンコルディア号を所有するコスタ・クロシエレ(Costa Crociere)社に指示し、環境に最大の注意を払いながらコスタ・コンコルディア号の周囲にオイルフェンスの設置を始めたことを明らかにした。

 オランダの海難救助大手Smitも、AFPに対し、コスタ・クロシエレ社から燃料抜き取り作業の依頼を受けたと語った。作業では安全性に留意するよう要請されたという。作業は数日以内に開始できる見通しだ。

■燃料流出に備え政府も準備

 一方、コッラード・クリーニ(Corrado Clini)環境相は、コスタ・コンコルディア号の座礁がもたらす環境リスクを「悪夢」と評した。クリーニ環境相は、同客船が積載していた燃料が海底に沈積する恐れを指摘し、流出油が沿岸を汚染し海洋生物や鳥たちに悪影響がおよぶ「最悪のシナリオ」への懸念を示した。

 万一、油が流出した事態に備え、政府も準備を進めているという。クリーニ環境相は、早急に燃料の抜き取り作業を始めたいと述べたうえで、同時に座礁客船の状態にも注意を払う必要があると語った。

 美しい砂浜と素朴な自然が有名なジリオ島は、イタリアでも有数のリゾート地だ。島の人口は800人だが、夏季には島内のリゾート用コテージで過ごす観光客らで5000人にも膨れ上がる。

 島の周囲の海域は海洋保護区となっており、クジラ・ウォッチングツアーも人気だ。(c)AFP/Dario Thuburn