【1月6日 AFP】(写真追加)米オレゴン国立霊長類研究センター(Oregon National Primate Research Center)の研究チームは5日、混合胚を持つサルの作製に世界で初めて成功したと、医学誌「Cell(細胞)」電子版に発表した。最大6個の異なる胚から出来た細胞を混合させたもので、医学研究に大きな前進をもたらしうる成果だという。

 受精卵または初期胚を複数融合させて「キメラ」を作製する試みは、これまでは主にげっ歯類を対象に行われてきた。

 肥満、心臓病、不安神経症、糖尿病、パーキンソン病などの研究目的で、特定の遺伝子を不活性化させたいわゆる「ノックアウト」マウスを作製することは、今や当たり前に行われている。

■異なる胚の細胞、合体せずに共同作業

 霊長類で同様のキメラを作製する試みは失敗に終わってきたが、同センターの研究チームは、キメラマウスの作製方法に変更を加えることにより、キメラのアカゲザルの作製に成功した。

   「ノックアウト」マウスは通常、研究室で培養した胚性幹細胞(ES細胞)をマウスの胚に導入することにより作製されるが、この方法はサルには通用しなかった。サルの胚が培養されたES細胞との融合を拒絶したためだ。

 そこで、完全な成体や生命を維持する組織などに分化する前の全能細胞の段階で、細胞を混ぜ合わせるという新たな手法を試みた。

 すると、細胞同士は融合はしないが共存し、組織や器官を共同で形作っていった。

 こうして生まれた3匹の赤ちゃんは、いずれも、導入された異なる胚すべての遺伝形質を持っていた。3匹は健康なオスで、「ロク」「ヘックス」「キメロ」と名付けられたという。

 なお、同センターは2000年、未受精卵の段階で余分なDNAを挿入されたサル「ANDi」の作製に世界で初めて成功している。(c)AFP