【1月6日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は5日、新国防戦略を発表し、武装勢力に対抗するための大規模な地上戦力を中心に据えたこれまでの戦略を転換して、中国の軍事的台頭への対処を重視する方針を示した。

 新国防戦略は、イランと中国の脅威に対し空・海軍の備えを強化する一方、イラクやアフガニスタンでの武装勢力に対する大規模な地上作戦の必要性は低くなったとみなしている。国防戦略見直しの背景には、今後10年間で国防予算を4870億ドル(約37兆6000億円)削減する必要が生じたことがある。

 オバマ大統領は、異例の国防総省での発表となった新戦略について、10年に及ぶ戦争を戦ってきた米国が「新たな段階に入った」と発言。「アジア太平洋地域での米国のプレゼンスを高める。この重要地域においては国防費は削減しない」と述べ、軍備を増強する中国の脅威が懸念されるアジア地域を戦略上重視していく方針を表明した。

 また、8ページに及ぶ新国防戦略資料によると、米軍は中東の同盟国と協調して湾岸地域の治安を維持し、イランの「不安定化政策」に対抗していく。一方、イラクやアフガニスタンなどにおける対武装勢力作戦の優先度は低くなっており、地上戦力を削減する。

 米国防総省内では長く、米軍は同時に2つの戦争に対処できなければならないとする方針が議論されてきたが、新戦略はこれを否定。1つの戦争に対処する傍ら、他の地域での脅威を抑止する戦略へとかじを切った。

 米議員の間に原子力潜水艦の削減を求める動きがある中、核兵器の削減も示唆しているが、具体的な方法は示していない。また、欧州からの撤退も示しつつ同地域での「展開も必要」として、詳細には言及していない。(c)AFP