【1月6日 AFP】米オハイオ(Ohio)州で最近起こっている小規模な連続地震は、「水圧破砕法」と呼ばれる天然ガス採掘の方法に原因がある可能性が浮上し、同州では関連が疑われる注入井を一時閉鎖している。
 
 大みそかの31日には、最近同州で起きた中で最も大きいマグニチュード(M)4.0の地震が発生した。震源は同州北部のヤングスタウン(Youngstown)近郊で、米エネルギー大手D&Lエナジー(D&L Energy)が採掘している天然ガス井に近い。

 この地域は「ユーティカ頁岩層(ユーティカ・シェール、Utica Shale)」と呼ばれる広大なシェール層にあたり、「水圧破砕法(フラッキング)」という方法による天然ガス掘削が大々的に行われている。オハイオ州の石油・ガス産業は多くをこうした開発に頼っている。

 水圧破砕法(フラッキング)とは、化学物質を含む液体を高圧注入して岩石を破砕することでシェール層に割れ目を作り、同時に砂などの支持材も注入して割れ目を確保し、そこから層内の原油やガスを取り出す掘削法だ。同州の推定埋蔵量が最大55億バレルの石油と4250億立方メートル相当の天然ガスを採掘する上で鍵となる技術だと考えられている。

 オハイオ州では12月24日にM2.7の地震が発生した後、ヤングスタウンにある注入井を密かに一時閉鎖した。しかし31日の地震の後にはさらに、その注入井から半径8キロ以内にある注入井にまで閉鎖範囲を拡大した。

■震源地はいずれも注入井の近く

 米コロンビア大学(Columbia University)ラモントドハティ地球観測研究所(Lamont-Doherty Earth Observatory)の地震学者ジョン・アームブラスター(John Armbruster)氏は3日、AFPの取材に「(地震との)関連性は非常にありうると思う」と答えた。「3次元解析の結果、震源は問題の注入井の底から約1キロの辺りだった」という。

 同氏のチームは昨年の11回の地震を分析し、地震と注入井が関連している可能性は「非常に高い」と州当局に報告。その結果、当局が注入井の一時閉鎖を決定した。オハイオ石油ガス協会(Ohio Oil and Gas Association)は、地震の発生原因などがはっきりするまで注入井を閉鎖することは正しい決定だと受け止めている。

 注入井で使用された液体は地上に戻ってくるが、汚染されているため、別の注入井に廃棄処理される。その排水処理が地震を引き起こしているとの見方もある。同協会のトム・スチュアート(Tom Stewart)副会長によると、同州で操業中の注入井は180か所で、排水量は年間700万バレルに上るが、1980年代の採掘開始以来、問題が生じたことはまれだという。

 しかし、こうした採掘を大規模に行った場合の悪影響については、ほとんど知られていない。米国では昨年、アーカンソー(Arkansas)州で大規模な群発地震が発生し、当局は注入井2か所の操業を一時停止させた。2009年にはテキサス(Texas)州フォートワース(Fort Worth)とダラス(Dallas)周辺の注入井とその近辺で発生した地震との関連性を地震学者が突き止めている。

 ヤングスタウン注入井の操業開始は2010年12月。その直後の2011年3月から、地震は発生し始めた。これまでにけが人はなく被害も軽微だが、同州周辺で地震が発生した記録はほとんどないため、大きな驚きをもって受け止められている。

 そして年末までに発生した地震は11回。震度はM2.1~4.0の範囲で、震源の場所と深さはほぼすべての地震で一致している。(c)AFP/Jim Mannion