【1月3日 AFP】車両が行きかう高速道路を渡るために野生動物がどの程度、排水溝を利用しているのかを確かめる大規模な調査が米メリーランド(Maryland)州で行われた。

 高速道路の下の排水溝は、雨水などのはけ口として設けられているが、さまざまな動物が車から身を守るためにこの人工構造物を利用していることは、これまでにも明らかになっていた。今回はこの横断実態を調べるため、州内ほぼ全域の高速道路の排水溝300か所に狩漁用品メーカー、モルトリー(Moultrie)製の野生動物撮影用赤外センサーカメラを設置した。

 その結果、この1月までの約2年間で、アライグマ、バージニアオポッサム、アカギツネなど多くの動物たちが、排水溝を利用して道路を横断していたことが分かった。排水溝を利用していなかった動物は、ボブキャットとアメリカクロクマ、コヨーテの3種類だけだった。

 調査を主導したメリーランド大学(University of Maryland)環境科学センターのJ・エドワード・ゲイツ(J. Edward Gates)教授はAFPの電話取材に対し、州内に生息するほぼ全ての哺乳動物が、排水溝を利用して高速道路を横断していたことが分かり、非常に驚いたと語った。

 中でも意外だったのは、オジロジカの例だ。オジロジカは繁殖しすぎ、北米では現在、狩猟で撃たれて死ぬよりも交通事故で死ぬほうが多いほどだ。これまでの研究では、シカは中をのぞいて出口の向こう側が見えるような、比較的大きな排水溝でないと利用できないと考えられていた。しかし今回の調査の結果、頭がつきそうなほど天井の低い排水溝でも横断していることが分かった。「その気さえあれば、非常に狭い排水溝でも通ろうとするだろう」とゲイツ教授は語った。

 メリーランド州交通当局によると、州内の高速道路で起きる車両と野生動物の衝突事故による死者は、毎年200人以上に上る。また動物の犠牲はさらに桁違いに多い。今回の調査は、こうした死亡事故と発生するコストの削減を目指すメリーランド州高速道路当局が資金を出して行われた。(c)AFP/ Robert MacPherson