【12月28日 AFP】デンマークの首都コペンハーゲン(Copenhagen)で5月に開業した4つ星ホテル「ベラ・スカイ(Bella Sky)」の17階は、イタリア語で「美しい女性」を意味する「ベラ・ドンナ」という名を冠した女性専用フロアだ。
 
 男子は禁制。ロックされたガラス扉の前で「わたしも緊急時以外は、ここから先へは行けないのです」と総支配人のDuelund氏。警備主任のトムセン氏は「わたしはパスを持っているので」と言いながら、フロアに宿泊している女性客の感想を聞こうとうろうろしていたAFPの男性取材陣に退去を求めた。「クレームがあったので。お客さまのプライバシーが最優先ですから」。規則は徹底していて、自室に男性を招きたい場合はフロア変更をしなければならない。

 ホテル内の他のフロアは黒とグレーを基調にしたシックなインテリアだが、全20室のこの女性専用フロアだけは、ローズカラーとバーガンディーがベース。Duelund総支配人いわく「ホテルの部屋に足を踏み入れ、男性が最初にすることは窓から外の景色を見ること。そしてテレビをつけ、携帯電話を充電するための電源を探す。女性は対照的です。バスルームをのぞき、清潔か、どんな備品があるかを確認します」。バスルームには高級アメニティをそろえ、室内には生花やファッション誌を置いている。

■男女平等法を持ち出すのは的外れ

 しかし、この女性専用フロアについて「男性を侵入者と決めつけ」、デンマークの男女平等法に違反するものだという匿名の訴えが男女同権委員会に届き、委員会は11月、ホテルに男性との共有フロアに変えるよう命じた。

 これに対し、ジェンダーと権利を扱う同国のネットワーク「クヴィンホ(Kvinfo)」のユッテ・ラーセン(Jytte Larsen)氏は、女性専用フロアが性差に基づく差別を禁じる男女平等法に抵触するという主張は的外れな上、たった1人の男性の意見が通った判断だと批判する。

 ホテル側も方針を変更するつもりはない。Duelund総支配人は「このガラス扉はなにしろ6万クローネ(約82万円)もしたのですから当面、使わないわけにはいきません」と冗談めかして言った。開業当時は女性を保護するという意識よりも心遣いから女性専用フロアを設けたが、特に単身の出張で男性に部屋までついてこられることを恐れるビジネスウーマンたちに好評だという。

 ホテル内の他の794室は男性も泊まれるのだから、女性専用フロアの部屋にはチョコレートやフルーツといった「特別な」ウェルカムがあるからといって、それを差別と呼ぶのだろうかとDuelund支配人は問いかける。おまけに女性専用フロアの部屋の宿泊料金は1泊300クローネ(約4100円)で他のフロアよりも高い。「特別」はタダではないのだ。(c)AFP/Elise Grandjean