【1月5日 AFP】ケニアはトップアスリートの数が多すぎるが故に、2012年ロンドン五輪のマラソン代表チームの選出に頭を痛めている。その他の国にしてみれば贅沢な悩みだ。

 2011年に行われたマラソン主要6大会のすべてでケニア人選手が優勝を飾ったため、ケニア陸連(Athletics Kenya、AK)の選考委員は、ロンドン五輪に出場するランナーの残り1枠の決断を迫られている。

 アスリートに人気のケニアの高原地帯イテン(Iten)で集中トレーニングを積むウィルソン・キプサング(Wilson Kipsang)は、10月に行われた第30回フランクフルト・マラソン(30th Frankfurt Marathon)で世界歴代2位の2時間3分42秒で優勝したものの、代表選出には至っておらず、「選抜が難しいことを証明している」と話している。

 また、4月に行われた第31回ロンドン・マラソン(31th London Marathon)を2時間4分40秒で制したエマヌエル・ムタイ(Emmanuel Kipchirchir Mutai)も「2011年シーズンに数人の選手が素晴らしい走りを見せているが代表入りしていない。ケニア代表の競争率の高さがわかるだろう」と語った。

■世界陸上王者キルイと世界記録保持者マカウは確定

 これまで代表選考は、五輪と世界選手権を含む主要大会の代表選手を4月のロンドンマラソン(London Marathon)とボストン・マラソン(Boston Marathon)の成績に基づいて選出していたが、2011年9月にAKのアイザイア・キプラガト(Isaiah Kiplagat)会長は、第13回世界陸上大邱大会(13th IAAF World Championships in Athletics Daegu)で2連覇を達成したアベル・キルイ(Abel Kirui)と、世界記録保持者のパトリック・マカウ(Patrick Makau)をケニア代表に選出した。

 キルイとマカウを除く世界最高峰のランナーたちが、残された1枠を争うことになるが、世界陸上大邱大会では多くのケニア人選手が活躍したため、選考は最後まで熾烈(しれつ)を極めるだろう。

 ケニア人陸上選手のコーチを務めるアイルランド人のコルム・オコンネル(Colm O'Connell)氏は、「ケニアは大邱大会での成績を重視していた。種目が男子800メートルであろうが、男子5000メートルであろうが、マラソンであろうが、金メダルでなければ満足されない。重圧の中でメダルを獲得したアスリートたちの精神力は素晴らしい」とコメントしている。

■ケニア代表残り1枠、有力はキプサングとジェフリー・ムタイ

 世論では、キプサングとジェフリー・ムタイ(Geoffrey Mutai)のどちらかがケニア代表の最後の1枠を手にするとの意見が多数を占めている。

 ジェフリー・ムタイは第115回ボストン・マラソン(Boston Marathon)で世界最速の2時間3分2秒を記録したが、国際陸上競技連盟(International Association of Athletics Federations、IAAF)はコースが基準を満たしていないことを理由に、公式記録として認定しなかった。

 キプサングは「残りの1枠を獲得するには、もっと速い記録を出すしかない」として、2012年に選考会開催を希望している。また、ムタイも「それが最善の方法だ」とキプサングに同意し、「1レースでいいので勝負させて欲しい。ロンドンでもどこでもいい。速い方がケニア代表になればいい」と話している。

 残り1枠を争う中、選手たちは北京五輪の男子マラソン金メダリストで、2011年5月に転落死したサムエル・ワンジル(Samuel Wanjiru)氏の功績を引き継ぐ自信を見せている。

 キプサングは「ケニアにはワンジル氏より速い選手が多くいることは疑いの余地がない。それをロンドン五輪で証明する」と意気込みを語った。(c)AFP/Aileen Kimutai