【12月16日 AFP】地球が属する天の川銀河の中心部で、地球の3倍の質量を持つ巨大ガス雲が、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A(Sagittarius A)」の方向へ加速度的に移動し、確実に死を迎えようとしているとする論文が、1月5日発行の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表される。

 論文を執筆したのは独マックス・プランク地球外物理学研究所(Max-Planck Institute of Extraterrestrial Physics)のStefan Gillessen氏ら。チリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)による観測で、このガス雲の移動速度が時速800万キロと、約7年間で2倍に加速したことが分かった。

 今後2年間にブラックホールの圧倒的な引力によって引き裂かれていき、ブラックホールの半径400億キロ圏内に入る2013年半ばには消滅する運命にあるという。ESOは声明で、「ブラックホールの近辺には現在ほとんど物質がないので、新たに来る食事(ガス雲)は今後2年間、ブラックホールの主要なエネルギー源になるだろう」と述べている。

■リアルタイムに観測できる絶好のチャンス

 ガス雲は、付近にある高温の若い星が強い恒星風を受けて急速に質量を失い、その残骸が寄り集まって形成されたと推定される。主に水素とヘリウムで構成され、周りの星よりもはるかに温度が低く、周囲の高温の星から発せられる強烈な紫外線を浴びて輝いている。

 ガス雲はブラックホールに近づくにつれて高温になり、X線を放出し始めると考えられる。

 天文学者にとっては、巨大ガス雲が超大質量ブラックホールによって破壊される様子をリアルタイムに観測できる初めての機会となる。マックス・プランクの天文学者、ラインハルト・ゲンゼル(Rienhard Genzel)氏は、「次の2年間は極めて面白い年になる。超大質量ブラックホールの周囲で物質がどのような振る舞いをするのか、非常に価値の高い情報が得られるだろう」と述べた。(c)AFP