【12月13日 AFP】世界自然保護基金(WWF)は12日、東南アジア・メコン川流域の大メコン圏(Greater Mekong)で2010年、ムシクイの新種やクローンで繁殖するトカゲなど、2日に1種の割合で新種の動植物が発見されたとする報告書を発表した。

 タイ、カンボジア、ミャンマー、ベトナム、ラオス、中国・雲南(Yunnan)省にまたがる大メコン圏で昨年確認された新種は200種以上。大半は植物で、は虫類は28種、両生類は7種だった。

 ミャンマー北部カチン(Kachin)州で発見された獅子鼻のサルなどの一部の種は、既に地元民に知られていた。ユニークなものとしては、クローンで繁殖するためにオスを必要とせず、種のすべてがメスというトカゲがあり、これはベトナムのレストランのメニューから偶然発見された。

 新種の鳥類は1種で、小型のムシクイの仲間。ラオスのカルスト地形の地域に生息するため、「ライムストーン(石灰岩)ムシクイ」の呼び名がある。甲高い独特の鳴き声が発見のきっかけとなった。

■絶滅の危機も加速

 報告書は一方で「新種発見の最後のフロンティア」の1つである大メコン圏では、人為的圧力により発見以前に絶滅する種も出てくるだろうと警鐘を鳴らした。

 例えば、野生のトラの個体数は10年で70%も減少。ベトナムでは2010年にジャワサイが絶滅した。

 報告書は「急速で持続不可能な発展と気候変動は、生物多様性と生態系サービス、そして、それらに依存する数百万人の人々に深遠な影響を及ぼしている」と指摘。WWFの関係者もAFPに対し「大メコン圏の国々が生物多様性を価値あるものとみなし、(保護のための)積極的な投資を行わなければ、自然と生物種は途方もない速さで失われることになるだろう」と危機感を表明した。

 メコン川については水力発電所を建設する計画が持ち上がっており、環境保護団体は猛反対しているが、タイ、カンボジア、ベトナム、ラオスは数日前、建設を延期することで合意した。(c)AFP