【12月9日 AFP】米航空宇宙局(NASA)が収集した月の石や隕石(いんせき)などの試料が、各地の研究者らに貸し出されたまま行方不明になっている例が多発していることが、8日発表した内部監査で発覚した。

 NASAのポール・マーティン(Paul Martin)監査官が出した報告書によると、1970年~2010年6月までの間に貸し出され、紛失や盗難に遭った宇宙関連試料は517点にも上る。1969年の初の有人月面探査で採取された「月の石」などの貴重な試料も含まれており、一度も研究に使われなかったものもあるという。

 こうした試料には、月の石と土壌、小惑星・火星・月に由来する隕石、太陽の外層部から到達したイオン、彗星(すいせい)や星間空間のちり、地球成層圏で採取されたちりなどがある。

 監査報告書は特に、NASAの貸借記録が不正確な点、研究者らが借り受けた試料全てについて所在を確認できなかった点、研究に使用していないのに貸借期間を延長したり返却しない例がある点を指摘。NASAに対し、試料紛失を防ぐためには貸借記録システムの改善と、年1回の確認を行うべきだと勧告した。

 NASAは過去に何回か、試料紛失を認めている。2010年には、ある研究者が月の試料18点を紛失した。02年には米テキサス(Texas)州ヒューストン(Houston)のジョンソン宇宙センター(Johnson Space Center)で、月と隕石の試料218点が盗まれ、後に回収される事件があった。

 今年に入ってからは、紛失したと思われていた月の石1点が、米アーカンソー(Arkansas)州の図書館でビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領のファイルや記念品が入っていた箱から見つかっている。(c)AFP