【12月7日 AFP】今年7月に独立した南スーダン共和国の首都ジュバ(Juba)郊外。軍の司令部にあと200メートルのところまで近づくと、バイクタクシーの運転手は首を振り、それ以上、進むことを拒んだ。ジュバの街角は昼間はタクシーの客引きでにぎわうが、夜は閑散としている。治安部隊とすれ違うのを恐れているからだと運転手は言った。

 スーダンの反政府勢力として、南スーダンの独立をゲリラ戦で勝ち取ったスーダン人民解放軍(SPLA)の本部内に漂う緊張感と、兵士たちの疑い深いまなざしは、その重々しい壁の外側にいる市民の不信感に劣らなかった。「SPLAは21年間も内戦を戦ってきた。われわれの軍は南スーダンの人びとの革命と解放の使命を負っている」と軍のフィリップ・オージェ(Philip Aguer)報道官は述べた。

 その使命は果たされた。1月の住民投票でスーダン北部からの分離をほぼ満票で支持した南スーダンは7月9日、新たな国家として独立した。

■元ゲリラ戦闘員の社会復帰、軍近代化の障壁に

 今、南スーダン政府が注力しているのは、巨大な軍の専門化だ。そして内戦の間、ゲリラ戦闘員だった大勢の男性、女性、子どもたちを、雇用機会のほとんど用意されていない社会に復帰させることだ。「SPLAは、南スーダン正規軍に変わる」。名称変更は徐々にゲリラ兵士を減らし、平和を維持していく長く困難な過程の最初の一歩でしかないとオージェ報道官は強調する。軍情報部のマック・ポール(Mac Paul)副長官も「われわれは近代化を進めようとしているが、問題は元ゲリラ戦闘員たちの(社会への)再統合だ」と言う。

 2005年の包括和平合意以来、スーダンと南スーダンは法的には和平状態にあるが、両国は資源が豊富な国境の州を拠点とする互いの反政府勢力に、互いが資金提供していると非難の応酬を続けている上、脆弱な経済がいっそう安定を失っているため、新たな戦闘が勃発しかねない状況だ。

 南スーダンのサルバ・キール(Salva Kiir)大統領は8月、南スーダン政府と戦闘をしている勢力に対し、武装解除を条件に恩赦を申し出たが、これはSPLAの反乱組を軍に引き返させたばかりか、平時予算の1.4倍にまで軍事費を膨れ上がらせた。

 野党「スーダン民主改革のための人民解放運動(SPLM for Democratic Change)」のラム・アコル(Lam Akol)党首は、ゼロからの新国家建設に絶対的に必要とされているのは資金で、「平和の恩恵」を見出さなければ人びとは蜂起するだろうと言う。しかし、コスティ・ンガイ(Kosti Ngai)財務相は「治安関連の支出が異様に多いように見えるかもしれないが、ことは生死に関わる」と説明する。

 国連の「スーダン共和国における武装解除・動員解除・社会復帰計画(Sudan Disarmament, Demobilization and Reintegration ProgrammeDDR)」の下、軍の再編と軍事費削減の一貫として、南スーダン政府は兵士8万人と警官など治安要員7万人の解除を計画している。しかし、実際には軍に再び吸収される元反政府勢力と、解除される兵士の数が変わらない状況で、真の平和が訪れるまでDDRは効果がないという批判も聞こえている。SPLA特殊部隊の元訓練官リチャード・ランズ(Richard Rand)氏は、3~5年で軍の再編が完了するという国際社会の予想は楽観的すぎると警告する。

 スーダンとの国境に位置するユニティ(Unity)州は、埋蔵石油が豊富であると同時に、南スーダン政府に対する反政府勢力が最も活発な地域で、駐屯する南スーダン軍の規模は拡大している。ある少将はこの基地の中庭で製粉作業をしていた男たちを指しながら、10月に80人が死亡した攻撃があった後、入隊した兵士たちだと話した。「こっちで掃除をしているのは、降伏した者たちだ」。物資と銃をもらえるという約束につられた農民たちだという。

 この少将もまた、南スーダンに対する反政府勢力を裏で支えているのはスーダン政府だという南側の主張を繰り返し、南の離反者を北が利用し続ける限り、南スーダン軍も離反者を取り込むことを止めないだろうと語った。(c)AFP/Hannah McNeish