【12月3日 AFP】自分は故エルビス・プレスリー(Elvis Presley)の生き別れになった実の娘だと主張するスウェーデン人女性が、プレスリーの遺産管理人と遺族を相手取り、遺産相続や中傷で苦痛を味わったことへの慰謝料など1億3000万ドル(約100億円)を求める訴訟を起こした。

 原告のスウェーデン人女性、リサ・ヨハンセン(Lisa Johansen)さん(43)の訴えによると、ヨハンセンさんは「ロックンロールの帝王」、プレスリーの実の娘で、1977年にプレスリーが死去したあと、ヨハンセンさんが誘拐されることを恐れた母親によってスウェーデンに移住させられたという。ヨハンセンさんは、自分の母親はプレスリーの妻だったプリシラ(Priscilla Presley)さんで、プリシラさんとプレスリーの娘、リサ・マリー・プレスリー(Lisa Marie Presley)さんはヨハンセンさんの身代わりになった偽物だと主張している。

 ヨハンセンさんは以前、自分の生い立ちを記したという自伝『I, Lisa Marie』を出版した。だが、ヨハンセンさんがDNA鑑定を拒否したことから、出版社から2000年に訴えられている。その後の10年間、ヨハンセンさんは、ほぼ忘れられた存在だった。しかし、最近になってプレスリーの遺族との確執が表面化したことから、再びヨハンセンさんの主張に注目が集まっている。

■グレースランド訪問がきっかけ

 ヨハンセンさんは11月21日、米テネシー(Tennessee)州メンフィス(Memphis)地裁で提訴した。そのきっかけとなったのは8月、プレスリーの命日にヨハンセンさんが夫や4人の子どもとともに、プレスリーの邸宅と墓地があるグレースランド(Graceland)を訪れたことだった。

 その数日後、ヨハンセンさんの法律上の代表者のもとに、プレスリー家の弁護士、マーティン・シンガー(Martin Singer)氏から書簡が届いた。ヨハンセンさんがグレースランドの職員に対し、自分とプレスリー家が親しい関係にあると自慢したことを「とっぴで奇怪な詐欺行為」と非難する内容だった。

 シンガー氏は書簡のなかで、「私の依頼人の家族に対し、リサ・ヨハンセンが抱いている奇妙な執着や、自分が本物のリサ・マリー・プレスリーだという途方もない主張は、リサ・ヨハンセンの信用性を骨抜きにするものだ」と述べて、ヨハンセンさんの主張を真っ向から否定している。

 ヨハンセンさんは1992年にもグレースランドを訪れているが、シンガー氏によると、ヨハンセンさんはこの時、リサ・マリーさんに成り済ましてプライベートルームに入り、室内の備品を持ち出し、警報が鳴ったため逃げたという。

 シンガー氏もグレースランドの代表者も、この件についての取材に応じていない。一方、ワシントンD.C.(Washington D.C.)でヨハンセンさんの広報を担当しているマリア・スケリー(Maria Skelly)氏は、ヨハンセンさんは、プレスリー家とのさまざまな問題を家族の中で内々に解決したいと願っていたが、プレスリーの遺族はヨハンセンさんを遠ざけたいとの意図から、ヨハンセンさんが二度と何らかの要求を携えてグレースランドに来る気を起こさせないよう、「挑発的で敵対的」な態度をとってきたと述べた。

 公判の日程はまだ決まっていない。(c)AFP