【12月3日 AFP】ミャンマーの民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)さんは2日、昨年11月まで軟禁されていたヤンゴン(Yangon)の湖畔の自宅に、同国訪問中のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官を迎えた。今春の民政移管に続く一連の改革前には考えられなかった光景だ。
 
 スー・チーさんはクリントン長官が前日、首都ネピドー(Naypyidaw)でテイン・セイン(Thein Sein)大統領と会談したことに支持を表明した。そして笑顔のクリントン長官に、ミャンマーは「歴史的瞬間」を迎えていると述べ、「わたしたちが力を合わせれば、民主化への道から引き返すことはないでしょう」と語りかけた。また実質的には軍が支配している新政府はいっそうの改革が必要だが、可能な限り早く民主化を達成したいと述べた。

 米国務長官として半世紀以上ぶりにミャンマーを訪れたクリントン氏は、スー・チーさんの言葉にうなずき、3日間の訪問は「わたしたちを勇気づけた」と語った。

 スー・チーさんとクリントン長官は前日1日夜には米大使館で夕食を共にした。この時クリントン氏はバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領からの親書をスー・チーさんに手渡した。この親書でオバマ大統領は、スー・チーさんが世界の人びとに「インスピーレーション」を与えていることに感謝し、米国は「今も、そして常に」スー・チーさんを支持していると伝えた。

■米、対ミャンマー制裁解除の検討も示唆

 会見は温かくなごやかな雰囲気だったが、2人はともにミャンマーの状況について懸念を口にした。人権活動家らによると、ミャンマーでは依然、数百人から1500人程度が政治囚として投獄されている。また政府軍と少数民族の間では長年紛争が続いており、少数民族に対する強姦や強制労働も多いままだ。

 スー・チーさんは「この国にあるすべての敵対行為を、速やかに終わらせなければならない」と述べた。また、法の支配の徹底が必要だと繰り返して政治犯の全員釈放を要請し、今後は「自らの信条のために」人が逮捕されることがあってはならないと語った。

 クリントン長官は訪問の最後に、ミャンマー国民によるマイクロファイナンス(小口金融)や医療活動の取り組みや、紛争による地雷の犠牲者の支援のために、新たに120万ドル(約9400万円)の資金援助を行うと表明した。

 またクリントン長官は、ミャンマーの新政権の指導者たちには、民主化の進展いかんで米政府がミャンマーへの制裁解除を検討する可能性も示唆した。米政府はミャンマーでの人権侵害に関する調査委員会の設置を国連(UN)に求めてきたが、クリントン長官は態度を一歩軟化させ、「われわれは責任追及という原則を支持し、また正義と責任追及が重んじられる適切なメカニズムが保証されるよう求めていくが、それを達成するための自分たちなりのやり方を(ミャンマーの)新政権と野党が示す機会を与えることが重要だと思う」と述べた。(c)AFP/Shaun Tandon