【11月28日 AFP】ペルー・アンデス(Andes)山脈の海抜3700メートルの高地に2.4平方キロにわたって広がる、1600年前の石造遺跡群「マルカワマチュコ(Marcahuamachuco)」――。インカ帝国以前(プレ・インカ)のこの遺跡は長くその存在を忘れ去られていた。

 謎に包まれたその姿が徐々に明らかになるにつれ、世界遺産「マチュピチュ遺跡(Machu Picchu)」級の一大観光地になるのではないかと地元の注目を集めている。

 長い年月の風化にさらされてはいるものの、石碑に似た建造物や、高さ10~15メートルもの外壁、回廊や長方形の広場、居住施設、祭壇のある宗教施設などが今も存在している。「外敵を防ぐため高地に建造された、壁に囲まれた石の要塞」だと、政府主導の考古学チームの責任者、クリスチャン・ビスコンデ(Cristian Vizconde)氏は語る。

■いつ、どこから、なぜ?謎多きプレ・インカの遺跡

 「マルカワマチュコ」とは、先住民の言葉であるケチュア語で「タカのような頭飾りをつけた男たちの一団」を意味する。1900年ごろから考古学研究の対象となってきた。遺跡の一部は土の下に埋もれており、全ぼうを人びとの目から隠している。

 「アンデス山脈にあるプレ・インカ遺跡で最も重要な遺跡だ。独自の言語culli語を話し、独自の神を持り、ペルーの他の遺跡では見られない建造物がある」と、ビスコンデ氏は指摘する。

 だが、いまだ謎も多い。「どの文化に属していたのか。石の建造物が西暦350~400年に建てられたことは分かっているが、そこに住んだ人びとがいつ、どこからやってきたのか。何も分かっていない」とビスコンデ氏。人が住まなくなったのは13世紀ごろと考えられるが、住民たちがなぜ消えたのかも不明だ。

 「城」と名付けられた建物の分厚い壁の奥からは、恐らく祭司や貴族が埋葬されたとみられる墓地が発見されており、謎を解くカギが見つかる可能性に期待がかかる。

■第2のマチュピチュ遺跡になるか

 ペルー政府は2010年10月、世界の文化遺産保存に取り組むNPO「グローバルヘリテージファンド(Global Heritage FundGHF)」と協力して行っている大規模な保護政策の一環として、遺跡周辺の木々を伐採。本格的な調査のための基金も始まった。最終目標は、ユネスコ(UNESCO)世界遺産への登録だ。

 「遺跡全体の透明性が驚くほど高いことに衝撃を受けた。とても開放的で、王朝の権力を誇示し人々に強く印象付ける目的で建てられたのではないかと思う」と、GHF顧問のジョン・ハード(John Hurd)氏は語った。非常に印象的な遺跡で、「マチュピチュに依存した(ペルーの)観光業を変える」可能性すらあるという。

 遺跡郡の周辺にもおよそ300か所の遺跡があるが、金の無断採掘などにより危険にさらされている。観光地化によって、こういった遺跡を大切にする考え方や行動が生まれるかもしれない。遺跡郡を抱える人口15万人の町ワマチュコ(Huamachuco)郡のルイス・アルベルト・レバサ(Luis Alberto Rebaza)郡知事は、観光地化は「住民にとって大きな機会だ」と期待感を示した。(c)AFP/Roberto Cortijo

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