【11月26日 AFP】クリスマス商戦の火ぶたが切って落とされる感謝祭翌日の金曜日「ブラックフライデー」を迎えた25日、全米各地の店舗には買い物客が殺到した。

 買い物客が詰め掛けて小売業者が黒字になるとされることからブラックフライデー(黒字の金曜日)と呼ばれているこの日、全米のショッピングモールやインターネット上のオンラインショップには大量のバーゲン品が並んだ。

■買い物客が催涙スプレー噴射、10人負傷

 商品を手に入れようとするあまり買い物客同士が争う場面もみられ、カリフォルニア(California)州ロサンゼルス(Los Angeles)近郊のポーターランチ(Porter Ranch)では、商品を手に入れようとした30代の女性客が他の客に催涙スプレーをかける事件も発生した。ロサンゼルス市警によるとこの事件で子どもを含む少なくとも10人の買い物客がけがをした。

 カリフォルニア州の別の地域にある小売大手ウォルマート(Wal-Mart)の駐車場では、男性が強盗に銃で撃たれ重体になった。またサウスカロライナ(South Carolina)州にあるウォルマートでも強盗未遂があり女性が撃たれたほか、ノースカロライナ(North Carolina)州ファイエットビル(Fayetteville)のショッピングモールでも発砲があった。

 買い物客が殺到したのは小売店側の積極的な売り込みにあおられた面もある。今年は感謝祭の日のうちからバーゲンを開始し、そのまま夜通しセールを行った店も多かった。

■家族が量販店で過ごす感謝祭

 ノースカロライナ州アシュビル(Asheville)の米家電量販チェーン大手「ベストバイ(Best Buy)」前では、25日午前0時に始まるバーゲンのため、24日の正午ごろから客たちの列ができた。親戚十数人と並んでいたサンディ・ヘンダーソン(Sandi Henderson)さんは、「これこそ感謝祭よ。素晴らしい日だわ。こうやって家族が一緒に過ごせてもいるし」と語った。ヘンダーソン一家は、通常価格より300ドル(約2万3000円)ほど値下げされる薄型テレビを狙っていた。

 もっと熱心な人もいる。バージニア(Virginia)州フェアファクス(Fairfax)のベストバイ前では息子を連れたブレント・ハート(Brent Hart)さん(26)が23日からテントを張っていた。「挑戦だよ。こんなことはしたことがないからね」というハートさんのお目当てはテレビとノートPCだった。

 しかし、年に1度の狂乱の日となってしまった「ブラックフライデー現象」に眉をひそめる人もいる。大きな買い物袋を抱えた買い物客が行き交うニューヨーク(New York)の5番街にいたポール・カナリー(Paul Connolly)さん(42)もその1人だ。「まったくひどい消費主義のかたまりだよ。せっかくの感謝祭の祝日が『買い倒れの日』になっている」

 とはいえ、かくいうカナリーさんもおいの買い物に付き合い、高級百貨店サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)で通常より50%も安い180ドル(約1万4000円)になっていたダウンコートを買ったところだという。金融関係の仕事をしているというコノリーさんは、「普段は僕も行き過ぎたセールには大反対なんだ。ただ、僕自身が安く買える時は別さ」と笑った。(c)AFP/Sebastian Smith