【11月25日 AFP】米ニューヨーク(New York)・マンハッタン(Manhattan)の老舗高級ホテル「アルゴンキン(Algonquin Hotel)」の名物ネコ、「マチルダ3世(Matilda III)」が23日、市保健当局の取り締まりのせいで紐につながれ、ひと騒動となっている。

 1920年代には華やかな文学サロンの舞台となったことでも知られるアルゴンキン・ホテルの歴史上、マチルダ3世は「最も厚遇されてきた常連客」だったが目下、「ルールを理解するまで」紐につながれるという屈辱を受けている。ニューヨーク市保健精神衛生局が、ホテルのロビーを使用できるのは人間だけと規定した新しい衛生条例を導入したためだ。

■「ロビーにネコ」で格付け最低、ファン激怒

 保健精神衛生局が行っている市内の飲食提供施設の格付けに対し、アルゴンキンではロビーのうち食事の提供もしている座席エリアにマチルダ3世を出入りさせないという策を講じ、最高ランクの「A」の評価を期待した。ところが、格付けの結果は最低ランクの「C」で、老舗ホテルは長年にわたり保ってきた名声を失う危機に追い込まれた。

 この状況について、地元紙ニューヨーク・ポスト(New York Post)は「ニャウトレイジ(ネコ怒る)」と題して報道。米SNSフェイスブック(Facebook)のマチルダのファンページには、「フーッ!なんて失礼な。マチルダはアルゴンキンの一部なのに。市はもっとましなことができないの?」「マチルダ、一歩も動く必要なんてないよ」といったメッセージがあふれている。

 ホテルの広報担当、アリス・デアルメイダ(Alice Dealmeida)さんによると、マチルダ自身はいたって平静だ。「ロビーでポーズを取って愛嬌を振りまいていますよ。今はフロントデスクにいます」。現在は「食事提供エリアへ行かないよう、トレーニングを受けている」最中で、それができるようになれば紐は外されるという。

 アルゴンキン・ホテルには1930年代から、常に名物ネコがいた。マチルダは10代目。ネコ用のドアが付いた専用の部屋には、もちろん「ルームサービス」も付いている。ファンからは絶えずEメールが舞い込む。

■老舗レストランに相次ぎ「指導」、過保護と悪評も

 飲食店の外から見える場所に保健当局による格付けの掲示を義務付ける条例は、マイケル・ブルームバーグ(Michael Bloomberg)市長が導入した。禁煙条例や高脂肪食品反対キャンペーンなども推進してきた同市長は、格付けを貼り出すことで衛生水準の向上につながると主張するが、「口うるさい」過保護政策との悪評も買っている。
 
 今週初めには、ニューヨークの劇場外にある老舗レストラン「サーディス(Sardi's)」も長年売りにしていた無料チーズの提供を止めるよう圧力を受けたという報道があり、市内のメディアは一斉に不満の声を上げた。

「ザガット(Zagat)」などグルメガイドの多くで高評価を得、ニューヨーカーの間でNo.1ピザとの呼び声も高いブルックリン(Brooklyn)のピザ店「ディ・ファラ(Di Fara)」も、保健当局の審査を通らず、前週いったん休業に追い込まれている。ハエやネズミがいた痕跡など違反が複数見つかったとの理由だが、怒ったファンたちは「ディ・ファラ」のホームページに殺到し応援メッセージを書き込んだ。

 ある熱烈なファンはこう記している。「僕のピザにトッピングされた豚肉の上で、ネズミがセックスしてたって構わない。それでも僕はディ・ファラのピザを食べ続けるよ」 (c)AFP/Sebastian Smith

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