【11月25日 AFP】スウェーデン・ストックホルム(Stockholm)で今年6月に行われた世界初の人工気管の移植手術の術後経過が順調なことから、2例目の手術を実施したとの報告書が、24日の英医学誌「ランセット(Lancet)」に発表された。3例目の準備も進んでいるという。

 移植第1号となったのは、アイスランド・レイキャビク(Reykjavik)の大学院で地質学を専攻するエリトリア人男性で、がんで気管を切除された。

 スウェーデン・カロリンスカ大学病院(Karolinska University Hospital)のパオロ・マキアリーニ(Paolo Macchiarini)教授のチームは、男性の3Dスキャナー画像を基に気管の切除部分をガラスで再現。表面を男性自身の幹細胞(気管組織の前駆細胞)で覆った上で、気管の「骨組み」として移植した。手術には12時間を要した。

 男性の術後の経過は順調で、既に通常の生活に戻っており、この2か月間は学業にも専念できているという。

 さらにマキアリーニ教授は先日、同じくがんで気管を切除した米メリーランド(Maryland)州の30歳の男性に、2例目の人工気管移植を行った。「骨組み」はナノ繊維製と、大きく進化したという。

 現在は3例目として、生後13か月の韓国人の乳児への移植を計画している。

■人工心臓の移植も可能に?

 この手法による移植は、患者本人の幹細胞を使うため、拒絶反応を抑えることができる。また、ドナーによる臓器提供を待つ長蛇の列に並ぶ必要もない。

 マキアリーニ教授は、「今後も、人工気管の移植のための再生医療の取り組みを向上させ、将来は肺や心臓、食道にも応用していきたい」と述べている。(c)AFP

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