【11月25日 AFP】4億部超を売り上げるベストセラーとなり映画化もされた児童小説「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズの原作者J・K・ローリング(J.K. Rowling)氏が24日、英メディアの倫理に関する独立調査委員会の公聴会で証言し、自分宛ての記者の手紙が娘の学校かばんに入れられるなど子どもたちがメディア被害の対象となったことを、強く非難した。

■娘のかばんに手紙を忍ばせた記者

 ローリング氏が娘の学校かばんの中に記者の手紙を発見して憤慨したのは、「ハリポタ」シリーズが成功を収め始めた頃という。同氏は怒りに声を震わせながら、次のように証言した。「(娘の)かばんを夜、開いたら、学校からの手紙や子どもなら誰でも持っているようながらくたに混じって、わたし宛の封書を見つけたんです。あるジャーナリストからのものでした。あの時に感じた怒りは言い表せません。たった5歳の娘の学校さえもが、もはやメディアから完全に逃れられる場所ではないんだと思いました」

 また、別の大衆紙の記者は、ローリング氏の娘が「ハリポタ」シリーズの最終巻で主人公の魔法使いの少年が死ぬと言ってクラスメートたちを動揺させたというデマをめぐり、学校の校長に接触しようとしたと言う。

「わたし自身や自宅に透明マントをかけることはできないし、そうしたいとも思いません。しかし、有名であろうとなかろうと、自分の住所が何百万人という新聞読者に知られてしまう事態は尋常ではありません」とローリング氏は述べ、さらに下の2人の子どもが生まれた後は家から出ることができず「包囲されている」ように感じていたと語った。

■個人情報ナンバーをセットで盗まれた女優シエナ・ミラーさん

 ローリング氏が証言した調査委員会は、廃刊に追い込まれた英日曜大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド(News of the World)」の電話盗聴事件をきっかけにデービッド・キャメロン(David Cameron)首相が7月に設置した。

 ローリング氏の前には、映画『アルフィー(Alfie)』などで知られる女優のシエナ・ミラー(Sienna Miller)さんが、ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙の「偵察網」に自分のEメールや電話がハッキングされていたと証言し、そのため被害妄想的になって自分の家族や友人を非難してしまった経験を明かした。

 同紙から損害賠償は支払われたが、その後、同紙に雇われていた私立探偵で2007年にハッキングで実刑を受けたグレン・マルケア(Glenn Mulcaire)氏のメモを見たときの驚きについても、ミラーさんは語った。「そこには、3か月で3回変えた3つの電話番号全てに始まり、アクセス番号、暗証番号、08年にハッキングされた際に実際に使われたEメールのパスワードまでもが記してありました」

 自分に関する情報がメディアに掲載された後、ミラーさんは「激しい被害妄想」に陥り、家族や友人が自分を裏切ったと疑って彼らを非難してしまったが、それらの情報は実はボイスメールへのハッキングで盗まれたものだった。「テレビゲームか何かの中に入ってしまったみたいに感じました」とミラーさんは当時を振り返っている。

 今夏に立ち上げられた盗聴に関する一連の捜査の結果、24日にはコンピューター・ハッキングに関連する初の逮捕者が出ている。ロンドン警視庁によると、市北西部ミルトンキーンズ(Milton Keynes)で52歳の男が、コンピューターの違法使用容疑で逮捕された。男は12月初旬に警察に出頭する条件で保釈され、取り調べはそれまで行われない。(c)AFP/Danny Kemp