【11月21日 AFP】ロシアで行われた格闘技大会で20日、リングに登場したウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相に観客がブーイングと口笛を浴びせ、その様子が生中継されるという異例の出来事があった。反プーチン派からは称賛の声があがっている。

 その日行われたのはロシアの格闘家、エメリヤーエンコ・ヒョードル(Fedor Emelianenko)と、米国のジェフ・モンソン(Jeff Monson)の総合格闘技の一戦。流血の戦いは、ヒョードルの勝利で終わった。

 総合格闘技のファンを公言しているプーチン首相がヒョードルの立つリングに上ってスピーチを始めると、観客たちはブーイングと口笛で応じた。

■プーチン首相がスピーチ、観客はブーイング

 動画の中でプーチン首相はヒョードルを抱擁した後に話し始めたが、観客からの口笛や低いブーイングが止まらないためにいったん話を止めたように見える。プーチン氏がヒョードルを「ロシアの真のヒーロー」とたたえると、ようやく観客は歓声を上げた。

 プーチン氏のテレビ出演は厳密に演出されるのが通例で、見ず知らずの観客を前に即興で演説することはほとんどない。

 柔道の黒帯を持つプーチン氏が格闘技の試合会場でスピーチするというのは強権的指導者のイメージに合っているように思えるが、今回は同氏のパフォーマンスとしてはあまり例のない失敗となった。

■「時代の終焉」か「米国人に対するブーイング」か

 翌日の人びとの反応はさまざまだった。腐敗告発ブログで知られるアレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏はブログに動画を掲載し、「一時代の終焉(えん)」と書いた。

 露ウェブサイト「gazeta.ru」も、「公共のイベントでプーチン氏に対する嫌悪感が発露されたことなど、いまだかつてなかった」と伝えた。

 一方、大会が開かれたオリンピスキ(Olimpiisky)スタジアムの責任者、ミハイル・モスカリョフ(Mikhail Moskalyov)氏は、露ウェブサイト「Lenta.ru」に対し、観客のブーイングはリングを去る米国の格闘家に向けられたものだったと主張した。

 動画サイトのユーチューブ(YouTube)に投稿されたテレビ放送の映像は、21日午前中までに50万回以上再生された。(c)AFP

【参考】ナワリヌイ氏のブログ(ロシア語、動画があります)