【11月14日 AFP】米国のサーカス団体は、サーカスからゾウの芸を追放する法案が米議会に提出されたことを受けて、反対運動を展開している。

 ゾウは昔からサーカスで使われてきた動物だが、愛護団体などはゾウに多大な苦痛をもたらすものだと批判してきた。

 法案は移動サーカスを直接標的にしており、サーカスの過去15日間の日程に移動が入っていた場合、珍種や野生動物の芸を禁止するという内容。ジム・モラン(Jim Moran)下院議員(バージニア州選出)が今月、米下院に提出した。

 この法案で消えることになるのは、ゾウがいすの上でバランスをとる芸や、トラやライオンが炎の輪をくぐり抜ける芸、サルが一輪車を乗りこなす芸など、サーカスの人気演目だ。
 
 モラン議員は、声明で「移動サーカスがこれらの珍しい動物たちに、適切な生活環境を提供できないことは明らかだ」と述べている。動物園や水族館、競馬、それに映画撮影やその他の撮影イベントのための動物施設などは、この法案の対象外だという。

 動物愛護活動家たちは、サーカスの動物たちが残酷な訓練を受け、過酷で危険な施設で暮らしているとサーカスを批判してきた。今回の法案は10年ぶりにそういった行為を止めさせることを目指す試みとなる。

■「ゾウ保護にも貢献」とサーカス側

「地上最大のショー(the Greatest Show on Earth)」の宣伝文句で知られる米国で最も有名なサーカス団「リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス(Ringling Bros. and Barnum & Bailey)」は前週、ファン宛ての電子メールで「一団の伝統を存続させるため」の支援を求めた。

 リングリングサーカスのスティーブン・ペーン(Stephen Payne)広報はAFPの取材に対し、同法案は動物愛護ではなく単なる反サーカス法で、「リングリングサーカスや他のサーカス団を廃業させるためのものだ」と語った。「これはただの反サーカス法であり、まったく不必要なものだ。われわれはすでに興行するほぼすべての州で連邦法、州法、地域の法令のもとで調査され、規制を受けている」

 リングリング・サーカスは、同サーカス団がゾウをきちんと待遇しているだけでなく、アジアゾウの繁殖にも貢献していると述べる。サーカス団には1995年以降23頭のゾウが生まれ、同団の群れには50頭ほどのゾウがいる。また米国やスリランカなどでゾウの保護プログラムに資金援助もしているという。

 ペーン氏は「アジアゾウは141年間にわたってリングリング・ブラザーズの一員だった。(同サーカス団の前身を創設した)P・T・バーナム(P.T. Barnum)氏はブルックリン橋(Brooklyn Bridge)の堅牢さをニューヨーカーに知らせるために、自分のゾウたちに橋を歩かせたものだった」と語る。

■「野生にかえすべき」と愛護団体

 だが、芸のために飼育されている動物の保護活動を行っている愛護団体「PAWSPerforming Animal Welfare Society)」のエド・スチュアート(Ed Stewart)氏は、リングリング・サーカスのゾウはその華やかな衣装や芸当が思わせるほどには幸福ではない、と指摘する。

 法案提出後に会見したスチュアート氏は「最高の環境は野生であって、おりの中ではない」と語り、子どもたちにサーカスの動物を見せることをすべて止めるべきだと述べた。(c)AFP/Sebastian Smith