【11月14日 AFP】カナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相は13日、米国とのパイプライン計画が反対運動で遅延していることを受けて、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が行われた米ハワイ(Hawaii)ホノルル(Honolulu)で、中国への原油輸出を増やすことを考えていると胡錦濤(Hu Jintao)中国国家主席に伝えたと語った。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米政権は前週、環境活動家らによる大規模な抗議キャンペーンを受け、カナダと米国を結ぶキーストーンXL(Keystone XL)パイプライン計画をめぐる判断を延期すると発表した。環境活動家たちは、このパイプラインは事故を起こしやすく、気候変動を悪化させると批判していた。

 ハーパー首相は記者団に「(米国の判断延期で)わが国のエネルギー製品がアジア市場にアクセスできるようにしておくことの必要性が浮き彫りになった。このことをきのう(12日)、胡主席に示した」と述べた。

 ハーパー政権はオバマ大統領に、モンタナ(Montana)州からサウスダコタ(South Dakota)州を通り、ネブラスカ(Nebraska)州、カンザス(Kansas)州、オクラホマ(Oklahoma)州を抜けてテキサス(Texas)州に達する約2700キロのパイプライン延長計画を承認するよう圧力をかけていた。

 カナダ政府と同国のエネルギー企業トランスカナダ(TransCanada)、そして米共和党は、総額70億ドル(約5400億円)規模のこの計画で、米国は同盟国からエネルギーの安定供給を受けることが可能になる上、数千人規模の雇用が創出されると主張してきた。

 しかし環境活動家たちは、既存のキーストーンパイプラインでの原油流出事故に触れ、新たなパイプラインで事故が発生すれば米中西部の大平原「グレートプレーンズ(Great Plains)」の帯水層に壊滅的な被害が出ると主張していた。また、原油はタールサンド(オイルサンド)から取り出されるため、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を高レベルで排出することにもなる。

 オバマ政権は特に、非常に繊細な生態系があり、地下水が地表から浅い層にあるネブラスカ州のサンドヒルズ(Sand Hills)地域のルートにおけるパイプラインの懸念を指摘し、追加調査を指示した。米国務省はパイプライン計画の是非をめぐる最終判断を次期米大統領選後の2013年に延期した。(c)AFP