【11月4日 AFP】かつてサハラ砂漠(Sahara Desert)の南進を防ぐための「グリーンベルト」に囲まれて青々としていたニジェールの首都ニアメー(Niamey)は、「緑の肺」とも呼ばれていた。だがこのグリーンベルトは、ゆっくりと着実に死を迎えようとしている。

 この緑化計画に大きな打撃を与えているのが過疎化だ。収量が上がらず困窮した農民たちが村を捨ててニアメーに移住し、生計を立てるために木々を伐採している。

■壁ができるまでに30年

 西アフリカの内陸国ニジェールは、世界で最も暑く、最も貧しい国の1つだ。自給自足経済のこの国は、既に国土の大部分が砂漠化している。ニアメーは南部の小さいながらも肥沃な土地にあり、人口1600万人の大半がここに暮らしている。

 ニジェールの東西25キロ、幅1キロに及ぶグリーンベルト(緑の壁)を作る植樹作業は、ニジェールがフランスから独立した5年後の1965年に開始され、1993年に終了した。木々の成長にはおよそ30年の年月がかかった。

 プロジェクトにかかった費用は450万ユーロ(約4億9000万円)。大半が海外からの支援で賄われたという。

■アフリカ緑の壁プロジェクト

 同様の計画は、砂漠化が深刻な問題となっているアフリカ各地で導入が検討されている。

 各国首脳が現在力を入れているのが、西のセネガルから東のジブチまで全長7775キロにわたって木を植えるという「アフリカ緑の壁プロジェクト(Great Green Wall of Africa)」だ。その目的は、ニアメーのグリーンベルトと同じ。干ばつに適応した種の木を植えることによって土壌の浸食を遅らせ、雨水を地中に浸透させる。これがサハラ砂漠の進行を防ぐ。農業と放牧に頼っている地元共同体にとっては土が肥えるなどの利点もあるという。

 だが、資金不足のため、本格的な実施には至っていない。

■伐採する切実な理由

 一方、かつてはたっぷりと呼吸していたニジェールの「緑の肺」も、劇的に小さくなった。グリーンベルトの表面積2000ヘクタールのうち、既に半分が消滅したという。

「深刻な飢饉に見舞われた1984年に農村部から首都へ数百人が流入してきたころから、グリーンベルトがおかしくなり始めた」と、かつてグリーンベルトの監視員だったという男性は話した。

 その後、首都の近辺には「イラク」「クウェート」「リトルパリ」などと名付けられた新たな集落が続々と出現した。住人たちはわらで作った小屋や仮設テントに暮らしている。

 政府は2008年、これら2000人あまりの「不法占拠者」たちの家をブルドーザーでことごとく破壊した。ただし、それ以外は何もやらなかった。「生きのびていくためには、木を切って屋根を作り、残りを街中で売るしかなかった」と、ある住民は腹立ちまぎれに話す。

 政府の水・森林保全局のある職員は、「行き過ぎた森林伐採が続けばグリーンベルトは完全に消滅してしまうでしょう」と危機感を口にした。

 2004年、グリーンベルトの木の伐採に禁錮3月~2年の罰則を設ける法律が施行されたが、効果はほとんどあがっていない。

■野焼きも後を絶たず

 だが、元凶はこうした新しい住民たちだけではない。グリーンベルトの中には、ガソリンスタンド、駐車場、高級住宅街、モスクが続々と建設されている。

 ほかの原因もありそうだ。非政府系新聞は、地元当局者らがグリーンベルト内の建設を違法と知りながら、グリーンベルトの区画を裕福なビジネスマンらに売り飛ばしていると非難してきた。

 また、ニアメーの消防当局者は、グリーンベルトでは森林火災や野焼きが後を絶たず、すっかり荒れ野になってしまったと嘆いた。

 政府はそれでも、グリーンベルトのことを忘れたわけではないことを示そうとしている。8月3日の独立記念日の式典では、今年も、数千本の苗木が植えられた。(c)AFP

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