【10月31日 AFP】中国でも高齢化が進む中、30年以上続いてきた「一人っ子政策」が、人口問題の「時限爆弾」になりつつある。

 世界人口は70億人に達し、地球の資源に大きな負荷をかけつつある。その中で中国政府は、1979年の一人っ子政策導入以来、女性1人当たりの子どもの数を1.5人まで減らしてきたと主張することができるだろう。現在の中国人口は13億4000万人。しかし、世界で類を見ない規模と厳格さで実施してきたこの政策がなければ、現在、養っていたはずの人口はさらに数億人ほど多かったはずだ。

 しかし一人っ子政策は、強制的な集団避妊手術や妊娠後期になってからの堕胎など、さまざまな問題も生んできた。女児は疎まれて捨てられたり、殺されることもある。一人っ子政策を拒否する夫婦には、給与数年分にもなる罰金が科されうる上、投獄されることさえある。

■一人っ子の肩に、両親2人と祖父母4人の老後?

 けれども最近、人口統計学者や社会学者、経済学者たちが一斉に警告している危機がある。中国は史上唯一、豊かになるのを待たずして、先に高齢化問題に直面する国になりそうだというのだ。

 フランスの人口統計学者クリストフ・ギルモト(Christophe Guilmoto)氏は、欧州の出生率が前世紀を通してゆっくりと下がっていったのに対し、中国の危機は「比較にならないほど速い」スピードで迫っているという。

 人民日報(People's Daily)オンライン版によると、向こう5年間で中国の60歳を超える人口は、現在の1億7800万人から2億2100万人に増え、割合では全人口の13.3%から16%を占めるようになる。65歳超人口は現在9%だが、2050年までに4分の1に達すると国家人口計画生育委員会(Commission for Population and Family Planning)は予測している。

 一人っ子の肩に、両親2人と祖父母4人の老後がかかる究極の逆ピラミッド状態は、一方で失業が増え、都会への出稼ぎ移住に拍車がかかっている中国の政府にとって大きな頭痛の種だ。

 家族計画に携わる人口統計学者、梁中堂(Liang Zhongtang)氏は、1962~72年にかけて生まれた世代が引退するころの政府負担は甚大になると言う。毎年平均600~700万人程度の出生数が、その時期は年3000万人近かったからだ。

■一人っ子政策緩和を求める声

 4世代同居が当たり前だった時代の中国には考えられなかったことだが、現在60歳以上の半数は1人暮らしだ。高齢者のための医療施設や老人ホーム、資格をもったケアワーカーなどもすでに欠いている。政府は2015年までに特別施設の病床数を現在の倍にあたる600万床まで増やすとしているが、それも現在の不足分を補うだけでしかない。

 一方で、中国で国民皆保険・皆年金制度が実施されるようになったのはつい最近で、地方部人口の3分の2は年金を受けていない。

 中国は一人っ子政策をやめるべきなのか、それともせめて緩和すべきなのか。

「もちろんだ。生殖権は人権のひとつ。夫婦が何人子どもを持つかは政府とは無関係のことだ」と人口学者のHe Yafu氏は主張する。世界的に見て、中流家庭では核家族化が進んでいることから、「中国で一人っ子政策が緩和されても、多すぎるほど子どもをほしがる夫婦はそんなにいないと思う」と言う。

 他方で前月、一人っ子政策の緩和を決定した広東(Guangdong)省のような動きもある。中国で最も人口の多い同省では今後5年間、この決定に「大きな変更は加えない」と宣言している。(c)AFP/Pascale TROUILLAUD

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