【10月28日 AFP】11F1第17戦インドGP(India Grand Prix 2011)開幕を控えた27日、インドのグレーター・ノイダ(Greater Noida)にあるブッダ国際サーキット(Buddh International circuit)で会見が行われ、メルセデスGP(Mercedes GP)のミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)は、モータースポーツ界を震撼させた2つの事故死は「運命」だったと語った。

 インディカーと世界ロードレース選手権(WGP)で立て続けに起こった死亡事故についてショックを受けているものの、それが人生であり、運命は誰もが受け入れなければならないとコメントしたシューマッハは「レース中は危険な状況にいることを考えることはできない。限界までスピードを上げることにだけ専念しているし、そうしなければ満足できない。今週末もそれは変わらない」と話し、2011年シーズンの年間総合王者とコンストラクターズ選手権のタイトルが確定しても、ドライバーたちは全力でレースに臨むだろうと語った。

 16日の2011インディカー・シリーズ最終第17戦でダン・ウェルドン(Dan Wheldon)が、23日の世界ロードレース選手権・第17戦マレーシアGPでマルコ・シモンセッリ(Marco Simoncelli)が、それぞれ事故で死亡している。2つの訃報は、F1初開催となるインドGPに向けて準備を進めていたF1関係者に重苦しい空気をもたらした。

 しかしシューマッハは、最大時速320キロメートルで走行可能な、完成したばかりのサーキットの安全装置や管理体制は万全で、走行することに不安はないと主張し、「人生のどんな場面でも、完全な安全などありえない。確かにF1はモータースポーツの中でも最速だ。しかし同時に、安全性の技術も飛躍的に進歩している。(インドの)新コースは、コース脇に充分なスペースを確保している設計だし、高い安全基準がある。それでも何か不慮の事故が起こるなら、それはやはり運命と呼ぶしかない」と語った。

 一方、ほかのドライバーたちは事故のショックを隠せていない。年間総合優勝が確定しているレッドブル(Red Bull)のセバスチャン・ベッテル(Sebastian Vettel)は、「選手はリスクを承知の上で四輪や二輪のレースに臨んでいる。モータースポーツとスリルが大好きだが、同時に無事にレースが終わって欲しいといつも願っている。一瞬ですべてが変わってしまう事実を目の当たりにすると、ショックは大きい」と語った。

 8歳の頃からウェルドンとゴーカートレースで競い、フォーミュラ・フォード(Formula Ford)時代にはライバルだったマクラーレン・メルセデス(McLaren-Mercedes)のジェンソン・バトン(Jenson Button)は、ウェルドンとの思い出を振り返り、「彼は朝起きて『お前を倒したい』と言うような人だった。彼のことを追ってカートレースの世界に入り、フォーミュラ・フォードではライバルになった。いい勝負をたくさんしたし、お互いに尊敬していた」と話した。

 事故をテレビで観てから数日間立ち直れなかったと明かしたフェラーリ(Ferrari)のフェルナンド・アロンソ(Fernando Alonso)は、「レースに臨んでいる時はリスクのことを忘れている。時速310キロメートルの状態で事故が起きれば、大惨事になることは分かっているが、放出されるアドレナリンが危険であることを忘れさせる」と話し、レース中は危険を伴っていることを忘れがちであると認めた。(c)AFP