【10月27日 AFP】世界自然保護基金(World Wildlife FundWWF)と国際サイ財団(International Rhino Foundation)は25日、絶滅危惧種のジャワサイがベトナムでは絶滅したと発表した。

 南部のカットティエン国立公園(Cat Tien National Park)で2009年と2010年に行われたジャワサイのふんの調査で、ふんがすべて1頭のものであることが分かっていたが、昨年4月に同公園で死骸で見つかったジャワサイがその最後の1頭であったことがこのほど確認されたという。

 WWFは、死骸の足には銃で撃たれた傷があり、角は切り取られていたことから、密漁者に殺されたと見ている。そのため「公園側の保護の不徹底が絶滅の究極的な原因」だと述べるとともに、野生生物取引のための密猟はベトナムのほかの希少動物の将来をも脅かしていると警告した。

 WWFで東南アジア・メコン川流域の大メコン圏(Greater Mekong)の種の調査を担当するニック・コックス(Nick Cox)氏は、ベトナム・ハノイ(Hanoi)で開いた会見で、「ベトナムのジャワサイの悲劇は希少種の絶滅危機の悲しい象徴だ」と述べた。

■サイは南アフリカでも激減

 ジャワサイはアジア大陸では絶滅したと長らく信じられてきたが、1988年にカットティエン国立公園で1頭が捕獲されたのを機に、小さな群れが発見された。同公園はベトナムで唯一のジャワサイの生息地だった。

 ジャワサイはアフリカやインドやネパールに生息する種よりもやや小さい。WWFによると、アジアでは伝統的な薬としてのサイの角の需要が年々増え続けており、1キロ当たり最大10万ドル(約760万円)で取引されている。ベトナムでは、サイの角はがんを完治させると広く信じられているという。コックス氏は「サイの角には薬効などない。人間の爪と同じ物質で出来ているのに、わざわざ多額のお金を支払うなんて信じられない」と話した。

 ジャワサイは、インドネシアの小さな国立公園に生息する50頭を残すのみとなった。WWFは「インドネシアの個体群を保護し、増やすことが、最優先課題だ」と強調した。

 なお、ベトナム政府は前月、サイの密猟件数が急増している南アフリカ政府と、対策について協議した。南アフリカでは、密漁者に殺されたサイの数は2007年には13頭だったが、昨年は333頭と激増。今年は既に300頭を越えている。(c)AFP