【10月27日 AFP】ケニアの首都ナイロビ(Nairobi)のスラム街に住むシルベスター・バラサ(Sylvester Barasa)さん(34)は、10歳の時にかかったポリオの後遺症で両足が完全にまひしているが、コンテンポラリーダンスカンパニーでは花形のダンサーだ。

「これは障害を乗り越えるための1つの方法さ。僕はもうポリオを重大なこととは思わない。ポリオのことを考えもしないよ」とバラサさん。両足はいうことをきかないが、肩と胸の筋肉はボディービルダー並に鍛えてある。

 バラサさんは5年前、ダンスカンパニー「パモジャ(Pamoja)」が設立されたと聞き、すぐに友人と共にリハーサルの現場を訪れた。「カンパニーのみんなは僕を見て笑うんじゃないかとビクビクしていた。でも逆に、励ましてくれたんだ」

 パモジャはスワヒリ語で「一緒に」の意味。設立したのはイスラエル系カナダ人の振付師、ミリアム・ロサー(Miriam Rother)氏だ。最初は実験的なワークショップに過ぎなかったが、すぐに年に1回は公演を行うカンパニーへと成長した。

 その名の通り、健常者のダンサーと障害を持ったダンサーが入り混じって踊る。健常者は各自のスキルで、障害者は自分の体を最大限に動かして、1つのバレエを作り上げる。障害者が即興でソロをやることもある。

 先のバラサさんは、ダンサーをしていない時は物乞いをしている。「とてもきつい環境さ」と、バラサさんは控え目に表現した。毎朝、カヨレ(Kayole)のスラム街から車椅子を漕いでハイウェイに向かい、道端に車椅子を停めて砂の上に座る。トラックが土煙を上げながらひっきりなしに行き交っている。

 だが、4人の子の父親でもあるバラサさんにはダンスへの情熱がある。「ダンスから多くのことを教わった。柔らかくもなった。コンテンポラリーダンスが何なのか知らなかったけれど、身体を気持ちよくしてくれるものなんだということが分かったよ」と話した。(c)AFP