【10月15日 AFP】屋内で火を使って煮炊きする原始的な調理用こんろが原因で毎年、マラリアによる死者より多い約200万人が死亡しているという論文が13日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 まきや炭、家畜の糞などを燃料とする調理器具を使って屋内で料理をしている人々は、全世界で約30億人に上る。だが、狭い室内にまん延する調理中の煙が原因で、多くの人が肺炎や慢性肺疾患になっている。特に、外で働く男性よりも屋内で過ごす時間が長い女性や子どもへの影響が大きい。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)も、これを「環境関連の死因としては世界最大だ」と警告しているが、一般にはあまり知られていない。

■ 調理中の煙で呼吸器疾患に

 サイエンスに掲載された米国立衛生研究所(US National Institutes of HealthNIH)の研究チームによる論文は、より調理効率に優れた料理用こんろを貧困地域や辺境地にの住民らに普及させることで、健康の改善に加えて、燃料集めに時間を割かねばならない女児たちにも教育を受ける時間ができると指摘。

 論文の共著者、フランシス・コリンズ(Francis Collins)氏は、「開発途上国の人々の多くは、屋内での火を使った調理による煙が、健康に著しく有害であることに気づいていない」と話す一方で、この問題への国際的な取り組みが始まったばかりだと説明した。

■クリーンな調理用こんろ普及の動き

 同論文とともに掲載された、ペルーのアラン・ガルシア(Alan Garcia)前大統領の夫人、ピラール・ノレス(Pilar Nores)さんの論説記事によると、ペルー人口の約30%にあたる約1000万人が住むアンデス(Andean)高地では、女性の40%が心臓や肺の慢性的な疾患を抱え、子どもの60%は栄養失調と呼吸器系疾患に苦しんでいるという。

 ノレスさんが立ち上げた「Sembrando」運動の援助によって、この5年間でアンデス高地の約9万2000世帯(約50万人)に、改良型調理用こんろとトイレ、家庭果樹園が設けられた。その結果、気管支肺系の疾患が大きく減少し、5歳未満の子供の身長体重比も向上した。要した費用は、1世帯当たり200米ドル(約1万5000円)程度だったという。

 この成果を受けて、ペルー政府は全国に煙を出さないクリーンな調理用こんろ50万台を設置する運動を始めたという。

 国連の外郭団体、国連財団(United Nations Foundation)も企業やNGOなどと協力して、2020年までに世界175か国以上の1億世帯でクリーンな調理用こんろ普及を目指す「Global Alliance for Clean Cookstoves」計画を開始している。(c)AFP/Kerry Sheridan